2026.03.06

ディープインパクト記念に思う

今週末、中山競馬場では弥生賞(GⅡ)が行われる。
 皐月賞(GⅠ)のトライアルレースで、条件は本番とまったく同じ芝2000メートル。当然ながら、春のクラシック戦線を占う意味でも極めて重要な一戦であり、過去の好走馬の顔触れを振り返れば、その後にGⅠホースへと上り詰めた名馬の名がずらりと並んでいる。
 そんな格式あるプレップレースに『ディープインパクト記念』のサブタイトルがついたのは2020年のことだ。05年にこのレースを制したディープインパクトは、その年に無敗で三冠馬となったばかりか、古馬となってからもその勢いはとどまるところを知らず、通算7つのGⅠタイトルを制覇した。これは当時としてはJRAの芝競走における最多タイのGⅠ勝利数。ほぼ毎回、最後方、あるいはそれに近い位置取りから豪快に追い込み、直線ではゆうゆうと突き抜ける圧巻のレースぶりを見せた。その走りを、当時、円熟期へと向かう途上にあった武豊騎手が「飛んだ」と表現したのはあまりにも有名である。今なおこの馬を「史上最強馬」と評価するファンや関係者は多く、その存在感は時を経ても色あせていない。
 その偉大な功績を称えてサブタイトルが冠されたわけだが、記念すべき第1回ディープインパクト記念弥生賞を制したサトノフラッグは、何とそのディープインパクトの子どもだった。しかも手綱を取ったのも、父の現役時代と同じ武豊騎手。父が勝ったレースを、その産駒が、同じ鞍上で制するというめぐり合わせは大きな話題を呼び、当時の競馬界を大いに盛り上げた。
 ちなみにJRAで馬名が付けられたレースは、セントライト記念(GⅡ)やシンザン記念(GⅢ)、さらにトキノミノル記念を副題に持つ共同通信杯(GⅢ)など、ほかにもいくつか存在する。しかし、レース名となっている馬の産駒が、そのレースそのものを勝利した例はほとんど見当たらない。そうした事実を踏まえても、ディープインパクトという存在の規格外ぶり、そして種牡馬としての影響力の大きさをあらためて実感させられる。
 ところでNARに目を向けると、ロジータ記念やダイオライト記念といった馬名を冠したレースが行われているが、数としては決して多くない。一方、アメリカなど国によっては、名馬の名をレースとして後世に伝える例は非常に多い。オーストラリアもそんな国の一つであり、近年ではウィンクスがウィンクスSというGⅠのレース名となっている。
 ウィンクスが活躍したのは2014年から19年にかけて。かの地の伯楽クリス・ウォーラーに育てられたこの名牝は、4連覇を達成したコックスプレート(GⅠ)を含む驚異の33連勝、さらにGⅠ25勝という歴史的偉業を打ち立てた。4シーズン連続で年度代表馬に選出されるなど、まさに一時代を築いた存在であり、すでに同国の競馬殿堂入りも果たしている。
 そして18年には、自らの名が冠せられたウィンクスS(GⅠ)も優勝している。自分の名を持つレースを、自分自身が勝利する。そんな劇的なエピソードまで残したのだった。
(撮影・文=平松さとし)
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