2025.12.19

香港カップでの出来事

現地12月14日、香港のシャティン競馬場で香港国際レースデーが開催された。世界各国から一流馬が集結するこの日は、4つのGⅠレースが組まれ、香港国内だけでなく、世界中の多くの競馬ファンの注目を集めた。日本でもJRAで馬券が発売されたので、多くの方がご覧になったのではないだろうか。
その4つのGⅠはそれぞれ話題になったが、中でも大きな関心を集めたのが、2000メートルで行われた香港カップ(GⅠ)である。
4レースの中でも最も賞金が高く、メインレースとして行われただけでなく、人気になったロマンチックウォリアーが、同レース史上初の4連覇を懸けて出走したのも、注目を集めた要因だ。
そんなレースを観戦したスタンドを埋めたファンの熱気が最高潮に達する中、ゴール前の直線で思わぬ事態に見舞われた。4連覇へ向け先頭に躍り出たロマンチックウォリアーの後ろから追い上げて来た日本馬ベラジオオペラら各馬が全力で追い比べを繰り広げていたその最中、突如として不審者がコース内に乱入したのだ。
この人物は、11月に競馬場から北へ約13キロメートルの地点で発生した火災について、当局に原因究明を求める抗議行動として走路に侵入したとされている。抗議の意図は競馬そのものとは無関係だったが、タイミングと場所はいずれも極めて危険なものだった。
幸いにも、異変に気付いたレースのスターターが即座に反応。不審者にタックルして進路を遮り、馬群が通過する前にコース中央への侵入を阻止した。この迅速な判断と行動により、レースは致命的な混乱を免れたのだ。
もし制止が間に合わなければ、不審者が疾走する馬群と正面から接触していた可能性は高い。そうなれば人命に関わる事故だけでなく、騎手や馬にも甚大な被害が及ぶ恐れがあり、国際GⅠという大舞台で前代未聞の大惨事が発生していたかもしれない。
香港カップはあくまで開催のメインレースではあるが、この出来事はその後に続くレースを含め、イベント全体に重い影を落としかねない出来事だった。結果的に最悪の事態は回避されたものの、今回の一件は、国際的なスポーツイベントにおける警備体制と危機管理の重要性を改めて浮き彫りにしたと言える。
(撮影・文=平松さとし)
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