2025.12.12

ルージュリヴィエラ

11月29日、東京競馬場ダート1400メートルで行われた新馬戦に出走したのが、ルージュリヴィエラだ。
 「夏に入厩して、ゲート試験までは順調に進みました」
 そう切り出したのは、同馬を管理する嘉藤貴行調教師である。
 「ゲート試験までは大人しくしていたのですが、その頃から馬場に入れようとすると、頑なに動かなくなる素振りを見せるようになってしまいました」
 時には5分から10分ほど動かなくなることもあったという。
 「ただ、いずれにしても、ゲート試験に合格した段階で一度放牧に出すつもりでしたから、ある意味、予定通り放牧しました」
 再入厩後はその点に注意しながら調整を進め、11月も終わる頃、ようやくデビューの日を迎えた。
 「レース当日は概ね落ち着いていました。厩舎地区から装鞍所へ向かう地下馬道で、少し気が乗る素振りを見せた程度で、他はテンパることもなく大人しかったですね」
 そう振り返るのは、ルージュリヴィエラを担当する加藤昇ニ調教助手(38歳)だ。
 「パドックで暴れないか心配していましたが、そんな雰囲気はまったくありませんでした。一応ゲートまでは付き添いましたが、馬場入りの際には横山和生騎手が早々に『もう放して大丈夫ですよ』と言うほど落ち着いていました」
 一方で嘉藤調教師は、「半信半疑な部分もありました」と打ち明ける。
 「もう少し馬体に余裕がほしい印象でしたし、牡馬相手のダート戦でどこまでやれるか、という不安はありました」
 当日の馬体重は408キロ。小柄な馬体をゲートに収め、前扉が開くとやや鈍いスタートとなり、位置取りは後方となった。
 「小さい馬ですから、先行してどこまで粘れるかと思っていました。それだけに、スタートを見て『あちゃー』という感じでした」
 そう語る加藤助手は、続けて当時の様子を振り返る。
 「その後は下馬所へ向かうバスの中で実況を聞いていました。『ルージュリヴィエラは10馬身後方』というアナウンスを聞いて、ここでもまた『あちゃー』と思いました」
 同じような思いでレースを見守っていたのが嘉藤調教師だ。調教師スタンドから戦況を追い、こう話す。
 「レース前に和生とは『できれば好位で』と話していましたから、厳しい位置取りになったなと思いながら見ていました」
 しかし、その心境に変化が訪れたのは、レースが3〜4コーナーに差しかかった頃だった。
 「砂を被っても、しっかりハミを取っていましたし、鞍上の手も動いていませんでした。和生も腹を決めたのか、この感じなら少しは差を詰めてこられると思いました」
 直線に向くと、外に持ち出され、少しずつ前との差を詰めていく。その姿が目に飛び込んできた。ラスト2ハロンを切ったところで1頭が抜け出し、勝利までは厳しい状況となったが、嘉藤調教師はこう感じていた。
 「掲示板(5着)には載れそうだと」
 ところがルージュリヴィエラは、良い意味でその予想を裏切る末脚を披露する。
 「正直、あそこまで伸びるとは思っていませんでした。東京の長い直線とはいえ、最後まで脚色が衰えなかったのには驚かされました」
 ゴールでは2番手まで浮上していた。加藤助手も感心した様子で語る。
 「2着と聞いて、あとからVTRを見ましたが、それでも届かないのでは、と思う位置にいたので、本当に立派だと感じました」
 再び嘉藤調教師が続ける。
 「小さな体で紆余曲折がありながら、厳しい調教にも耐え、競馬でも最後までよく頑張ってくれました」
 一方、加藤助手はレース後の様子についてこう語った。
 「馬運車は通常、レース後1時間半ほどで出発しますが、万全を期して1本遅らせました。ただ、テンションが上がることもなく、まったく問題ありませんでした」
 次走について嘉藤調教師は展望を示す。
 「この内容なら、年明けの中山か、再び東京で使えそうです」
 このまま順調にステップアップしていく姿を期待したい。
(撮影・文=平松さとし)