2025.10.24
レッドバンデ菊花賞へ
「子どもっぽいだけで、悪さをするわけではないんです」
そう語るのは、長谷川純平調教助手。大竹正博調教師の「少しうるさい面があります」というコメントに対しての言葉だ。
大竹厩舎に所属し、この夏に30歳を迎えた持ち乗りの長谷川調教助手。彼からそう評されているのが、今週末の菊花賞(GⅠ、京都競馬場)に挑むレッドバンデである。
「デビュー前から担当させていただいていますが、運動中に周囲の馬の影響を受けてバタバタするなど、子どもっぽい面があるのは確かです。でも、それは扱う側が注意すれば問題ありません。馬房の中ではむしろ従順で、人の指示にも素直に従うタイプ。決して手のかかる馬ではないです」
春は青葉賞(GⅡ)で4着に健闘。あと一歩のところで競馬の祭典・日本ダービー(GⅠ)の舞台には立てなかった。しかし、その悔しさを晴らすように稲城特別を快勝。夏場にリフレッシュを挟み、前走セントライト記念(GⅡ)では好位から進むも、勝負どころで一瞬スムーズに抜けないシーンがあった分、3着惜敗に終わった。
「前走のとき、大竹先生は『少し重たいかな』とおっしゃっていましたが、確かにそんな印象がありました。それに比べると、今回は使われた分だけ気持ちも入ってきて、体も良くなっていると思います。確実に上積みはありますし、あの状態であれだけ伸びたのですから、今回はもっと良い走りをしてくれるはずです」
懸念されるのは、初の長距離輸送と3000メートルという距離。だが、その点についても長谷川助手は落ち着いて話す。
「関西への輸送は初めてですが、馬運車の中でも飼い葉をしっかり食べるタイプですし、積み下ろしも全く問題ない馬なので特に心配はしていません。距離の3000メートルは未知ですが、それはどの馬も同じです。稲城特別の走りを見れば、こなせると信じています」
山形県の一般家庭に生まれ、両親と妹、弟の5人家族で育った長谷川助手。高校卒業後はいったん就職したが「どうしても競馬の世界に関わりたい」と2年で退職。千葉県の学校で馬乗りの基礎を学び、競馬学校を経て美浦トレセン入りした。
「トレセンに来て、もう6年ほどになります」
その間に担当したシュバルツカイザーでは、オープン2勝を挙げ、高松宮記念(GⅠ、2024年)で自身初のGⅠ挑戦を経験。今回はそれ以来、2度目の大舞台となる。
「GⅠだからといって特別なことをしても、いい結果にはつながらないと思います。普段から小さなことにも気を配り、GⅠでも平常心で臨む。それが一番大事だと思っています。今回も、その気持ちは変わりません」
長谷川助手とレッドバンデ。両者の信頼が生んだ成長の軌跡が、ついに菊花賞という三冠最後の舞台で結実する。3000メートル先に、この馬の真価が花開くか。期待したい。
(撮影・文=平松さとし)