2026.05.27

スポニチアネックス

【ダービー】己を鍛える房野助手 愛馬ロブチェンと共に未踏の地へ

 【見たこともない景色(3)】ロブチェンを担当する房野助手にとって、馬乗りとして礎になったのがナムラクレセント(福島信晴厩舎時代に担当)。G1を勝たせられなかった責任は自分にある。而立(じりつ)の30歳を境に一念発起。改めて自分と向き合うようになった。

厩舎でリラックスした表情を見せるロブチェンと房野助手

 馬乗りとして理想の体を手に入れるため、日々のトレーニングにさまざまな要素を取り入れた。ヨガに始まり、クラシックバレエ、自転車、ボルダリングなど。「もちろん趣味と実益を兼ねてですが、自分の身体能力をどう上げていくか、ですね」。全ては担当馬との“真剣勝負”のため。

 「今でもロブチェンに乗るのは、しんどい。だいぶ頑張らないと、という部分はありますね。それでも、これぐらいの能力がある馬が乗りづらいのは当然。このレベルにある馬が、ただ“乗りやすい”は良くない。今はこの馬のパワーに自分が設定を合わせにいっている。昔の僕なら、たぶん乗れていない。大谷翔平の変化球も、捕れるキャッチャーがいるから成立する」

 レースでは従順に思えるロブチェンも“超合金クロビカリ”に例えられるようにパワーの塊。日々の調教は戦いだ。皐月賞は1分56秒5のレースレコードで逃げ切った。それでも途上だと話す。

 「現時点で65点ぐらいですかね。70点ぐらいでダービーに向かえればいい。もちろん仕上がりという意味じゃないですよ。この馬の完成形を100点とした場合ですね。言ってしまえば高校生の(ウサイン)ボルト。高校生の大会なら当たり前に勝つでしょう。夏の甲子園の優勝投手が完成形かと言うと、そうじゃないですから」

 人馬ともに目指すのは、誰も到達したことがない境地。見たこともない世界。ダービーが目前に迫っても気負いはない。「追われる立場と言われますけど、突き放す立場だと思っています」と力強く笑った。トレーニングに終着点がないように、柔らかい筋肉の鎧(よろい)をまとった両者はこれからも進化、成長を続けていく。 (オサム)

 ◇房野 陽介(ふさの・ようすけ)1979年(昭54)2月12日生まれ、神戸市出身の47歳。広島大工学部中退後、イクタトレーニングファーム(愛知県豊田市)で4年半、経験を積み、JRA競馬学校厩務員課程を経て栗東トレセンへ。福島信晴厩舎でナムラクレセント(11年阪神大賞典V)を担当。18年2月末、師の定年引退による厩舎解散に伴って杉山晴紀厩舎へ。ケイティブレイブ(18年JBCクラシックV)、ゲルチュタール(26年日経新春杯V)などを担当。