2026.03.27

スポニチアネックス

吉田豊 揺れた心情…22年ドバイでの「デッドヒート」

 【競馬人生劇場・平松さとし】今週末、ドバイワールドカップデー(メイダン)が開催される。メインのドバイワールドC(G1)にはフォーエバーヤングが出走予定だが、同じ矢作芳人調教師の管理馬で、4年前のドバイで喝采を浴びたのがパンサラッサだ。

22年のドバイターフで健闘を称え合う吉田豊(左)とデットーリ(撮影・平松 さとし)

 22年のドバイターフ(G1)に挑戦した同馬は、日本では吉田豊騎手とのコンビで大逃げを打ち、競馬場を沸かせてきた。そして、メイダン競馬場でも果敢にハナを切った。しかし、日本でのレースのように後続を大きく引き離す展開にはならなかった。レース後、吉田豊騎手はこう振り返っている。

 「同じ感じで行っていたつもりですが、後ろがついてきていました」

 実際にラップを見ると、この鞍上の感覚が誤りでないことが分かる。最初の5F58秒台前半。パンサラッサ自身は、いつも通りの走りをしていたのだ。

 その上で吉田豊騎手は「向正面で一度手前を替え」、さらに「4角でいったん後ろを離しにいった」。この判断が奏功し、最後まで粘った。結果は、前年覇者ロードノースと馬体を並べてのゴール。長い写真判定の末、1着同着となった。

 さて、この同着が決まった瞬間には、こんなエピソードがある。判定結果を待つ間、吉田豊騎手の約5メートル先にロードノースに騎乗していたL・デットーリ騎手がいた。次の瞬間、場内放送が「デッドヒート!」と告げた。

 日本では「デッドヒート」は激しい競り合いを意味するが、本来は「同着」を指す言葉だ。そのため、このアナウンスを聞いたデットーリ騎手は喜んだが、吉田豊騎手は「それは分かっている」とばかりに表情を崩さなかった。その後、喜ぶデットーリ騎手の姿を見て、「自分は負けたのだと思った」という。

 健闘を称え合おうと抱きついてきたデットーリ騎手に対し、吉田豊騎手が口をへの字に曲げていたのは、そのためだ。だが同着と分かった後、心境は一変する。

 「同着と分かった後は、あのデットーリと同着なんて狙ってもできないことですから、本当にうれしくて、改めて抱き合いました」。(フリーライター)