2025.10.16

スポニチアネックス

【秋華賞】エンブロイダリー 重馬場坂路で時計以上の推進力 森一師も充足感

 牝馬3冠最終ラウンド「第30回秋華賞」の最終追い切りが15日、東西トレセンで行われた。オークス9着から直行ローテで逆襲を期すエンブロイダリーは桜花賞優勝時を倣って栗東に滞在して調整中。坂路で確かな成長を示す走りを披露した。美浦では中京記念1着からの異色の道のりをたどるマピュースも好況をアピール。昨年ワンツースリーの関東勢が牙を研いでいる。

坂路を単走で追い切るエンブロイダリー

 未明の雷雨で重馬場となった栗東の坂路。関東から遠征してきた桜花賞馬エンブロイダリーがその中央を真一文字に駆け上がった。4F54秒6の全体時計以上に推進力を感じさせ、ラスト1F12秒3まで奇麗な加速ラップを刻んだ。森一師は「今朝は馬のリズムを重視して。追い切り後、ゲートの駐立も立ち会って見てきたが、落ち着いていて息遣いも良かった」と充足感をにじませる。

 桜花賞以来2度目の栗東滞在。ウイークポイントである蹄を保護するため、当時と同じ特殊蹄鉄で調整を進めている。内側の鉄の部分を4分の1削減して負担を軽くした「4分の3蹄鉄」。踏み込んだトモ(後肢)が前肢の蹄と追突して傷めてしまうのを防止する目的で、同じシルクレーシングの先輩アーモンドアイも3冠が懸かる秋華賞で使用した。「装蹄師さん、アーモンドアイでノウハウがあるノーザンファーム天栄とも連携しながら。爪の状態は桜花賞の時と変わらない」と万全のケアが施されている。

 その天栄で充実の夏休みを過ごし、馬体は見違えるほどに大きくなった。「現時点で490キロ台(前走482キロ)。体高、胴もスラッと長くなった。トモや肩周りなど、付くところに筋肉が付いて、いい成長を遂げた」と胸を張る。2冠を目指したオークス(9着)は「気持ちが入って折り合いを欠いてしまったのが大きな敗因」だけに、「いかに落ち着いてゲートインできるか、細心の注意を払いたい」と最終追い後も気を引き締めた。

 残す課題は距離。父父ダイワメジャーの産駒はJRA重賞全55勝が9F以下。10Fに明確な壁がある。その血を継ぐアドマイヤマーズの産駒も牝馬はまだ2000メートル以上で勝利がない。森一師も「ベストではない」と認めるが、「守備範囲ではあると思う。スピードの持続力がこの馬の武器」とその能力を信頼する。先週末に3度レコードタイムが飛び出た京都の芝は、電光石火のスピードが生きる馬場状況。大叔母ダイワスカーレット以来18年ぶりとなる桜花&秋華の2冠制覇へ、やるべきことはやった。