• トップページ
  • Topics & News
  • 【追憶の北九州記念】08年スリープレスナイト 病み上がりの上村騎手に贈ったV 橋口弘師が胸を張った

2025.07.02

スポニチアネックス

【追憶の北九州記念】08年スリープレスナイト 病み上がりの上村騎手に贈ったV 橋口弘師が胸を張った

 夏の小倉といえば九州出身調教師の腕の見せどころである。北九州記念も鹿児島県出身の北橋修二師(01年エイシンプレストン)、同じく鹿児島県出身の岩元市三師(02年トッププロテクター)らが自慢の管理馬を小倉競馬場に送り込んで重賞制覇を収めてきた。

08年北九州記念を制したスリープレスナイト。上村洋行騎手も力強くガッツポーズ

 しかし、何と言っても橋口弘次郎師(宮崎県出身)である。94年イブキファイブワン、04年ダイタクバートラム、08年スリープレスナイト、13年ツルマルレオンで計4勝。「オレの辞書に北海道という文字はない」と言い切り、夏は小倉競馬に管理馬を集中して送り込んだ。

 中でもスリープレスナイトは出色の強さだった。

 2枠4番から抜群のスタートを切り、内枠から主張したエムオーウイナーを行かせる余裕。4角では3番手の外で絶好の手応え。あっという間に前2頭をかわし、追い上げてきたマルカフェニックスに2馬身差をつけてフィニッシュ。上村洋行騎手(現調教師)の右腕はゴールを通過する前にもう上がっていた。

 「この馬の強さを再認識しました。G1という目標がいよいよ現実のものとなってきています」(上村騎手)

 これで馬は4連勝。前走CBC賞に続く重賞連勝劇となった。

 上村騎手はデビュー当時から、その高い技術を評価されてきたが、03年に「黄斑上ぶどう膜炎」という目の病気を発症。視界が白く濁り、日々、視力が落ちていった。引退も考えたというが、4度の手術を経て競馬場へと戻ってきた。

 だが、視力を取り戻したとはいえ、そう簡単に騎乗依頼は集まらない。成績は伸び悩んだ。そこで手を差し伸べたのが橋口弘師だった。

 スリープレスナイトはデビュー5戦目から上村騎手にスイッチして白星。そこからほぼ上村騎手が乗り続け、CBC賞が実に9年7カ月ぶりの重賞制覇となった。感激する上村騎手に橋口弘師は「まだまだ、ここからだぞ」と激励したという。

 そして、この北九州記念V。上村騎手も喜びというより、気持ちの手綱を一層、引き締めた様子のお立ち台となった。

 橋口弘師はこう語った。「うれしいというよりホッとしたね。気持ちの中では、絶対に勝つんだと思っていたから。時計も速いし、内容は満点。金メダルを3つくらいあげたいよ」

 しかし、次走で本当の金メダルがやってきた。08年スプリンターズS。スリープレスナイトは1番人気に応えて快勝した。

 引き揚げてきて馬を下り、真っ先に橋口弘師と抱き合って「ありがとうございます!」と叫んだ上村騎手。4度の手術に耐えたその瞳からは涙が止まらなかった。