2026.05.08
レッドアンシェル
今週末、東京競馬場ではNHKマイルC(GⅠ)が行われる。この3歳マイル王決定戦で、2017年に4着と健闘したのがレッドアンシェルだ。
前年、札幌の芝1500メートルの新馬戦を快勝した同馬は、続くもみじS(オープン、京都競馬場・芝1400メートル)も連勝。その後はマイル戦に照準を絞り、朝日杯フューチュリティS(GⅠ)8着、アーリントンC(GⅢ、現チャーチルダウンズC)2着を経て、東京の3歳マイルGⅠへと駒を進めた。管理した庄野靖志調教師は、当時を次のように振り返る。
「マンハッタンカフェ産駒ですが、気の良さと体型から、短めの距離の方がいいのではないかと、育成段階から考えていました。新馬戦は牧場から札幌に直接入厩させ、1カ月以上じっくり乗り込んでから使いました。追い切りの動きも良く、自信を持って臨みました。デビュー後も順調で、早くからNHKマイルCを目標に据え、予定通りに出走することができました」
レース当日、装鞍所やパドックではややイレ込む様子も見せたという。
「ただ、全体としては想定通りに運べていましたし、仕上がりも良かったです。レースは福永祐一君(騎手、現調教師)に任せました。東京のマイルは一朝一夕では結果の出ない条件ですが、祐一君が乗り続けてくれていましたから、信頼して託しました」
ゲートが開くと好スタートを切り、中団で流れに乗る。最後の直線では外からしっかりと脚を伸ばした。結果は4着だったが「力は出し切れたと思います」と指揮官は振り返る。
「スタートもレース運びも上手な馬で、この時点の能力はしっかり発揮できていたと思います」
その後、同じ1600メートルのリゲルSこそ制したものの、次第に距離を短縮し、1200メートルのスプリント戦が中心となった。そして古馬となった2019年、CBC賞(GⅢ)で重賞初制覇。さらに翌20年には北九州記念(GⅢ)も制した。いずれも鞍上は福永祐一騎手だった。庄野調教師はこう語る。
「クラスが上がるほど適性が重要になります。レッドアンシェルはスタートが上手でしたから、その点も踏まえて短距離へシフトしたのが良い結果につながりました。CBC賞は雨でかなり馬場が悪かったのですが、距離適性の高さでこなしてくれました」
そう話すと、さらに続けた。
「短距離戦ではゲートの巧さが大きな武器になります。祐一君いわく『ゲート内で前扉が開く瞬間の“カチャン”という音を馬自身が待っているのではないか』と思うほど、スタートが上手でした」
スタートの巧さはレッドアンシェル自身のもともとの資質によるところも大きいだろうが、福永騎手が継続して騎乗したことで教育され、培われた面も大きいはずだ。
庄野調教師は、改めてこう締めくくる。
「東京サラブレッドクラブさんの馬は毎年預からせていただいていますが、アンシェルが大きな転機となり、ディープインパクト産駒なども任せていただけました。そういう意味でも、レッドアンシェルは間違いなく思い出に残る一頭です」
(撮影・文=平松さとし)