2026.04.30

カーインライジング

現地26日、香港のシャティン競馬場で香港チャンピオンズデーが開催され、3つの国際GⅠレースが行われた。
 メインレースのクイーンエリザベスⅡ世カップ(GⅠ)は、地元のロマンチックウォリアーが4度目の優勝。日本馬も3頭がこの香港の雄に挑んだが、残念ながら跳ね返される結果となった。
 世界最強といえば、チェアマンズスプリントプライズ(GⅠ)を制したカーインライジングも同様だ。今回は日本のチャンピオンスプリンター、サトノレーヴに4馬身4/1差をつけ、またしても快勝。抜け出した後は鞍上のZ・パートン騎手が早々に手綱を抑えていたにもかかわらず、レコード勝ちでこの着差なのだから、まさにスプリント界に敵なしである。連勝はこれで20。ここ3走はすべてレコードタイムをマークしている。さらに、香港における1200メートル戦の歴代最速タイム上位9つのうち、6つが彼の叩き出した時計となった。ラスト400メートルで記録した21秒52というラップも自己ベスト。秋にはオーストラリアへ遠征し、昨年も制したジエベレストに再び出走予定とのことだが、世界を舞台にした彼の黄金時代は、まだまだ続きそうだ。
 香港といえば生産地を持たず、ほとんどの競走馬は南半球から輸入されてきた馬たちである。輸入前に去勢されるケースもあれば、香港入りした後に施される場合もあるが、ほぼ100パーセント近くが騸馬であるのも特徴で、カーインライジングもその例に漏れない。前述のロマンチックウォリアーも同様だが、香港でこうした馬たちが活躍すると「牡馬のままで競走馬引退後に種牡馬入りできていれば、この血を残せるのに……」という声も聞こえてくる。
 もっとも、そもそもその分野をハナから視野に入れていない香港の関係者たちから、そうした話が出ることはまずない。実際、去勢したからこそこれだけ走れたという馬も少なからずいるだろう。もしかすると、ほとんどがそうなのかもしれない。まあ、考えても詮ない話として受け止めるしかないのだ。
 それよりも考えさせられるのは、こうした世界に通用する、いや、通用するどころか世界トップレベルの馬たちが定期的に現れる香港競馬の仕組みが、いったいどうなっているのかという点である。
 香港競馬には、中国大陸側に従化競馬場という新たな競馬場が2026年にオープンした。施設自体は18年にほぼ完成し、翌19年からはトレーニングセンターとして機能している。私も一度訪れて見学させていただいたが、JRAの美浦や栗東のトレーニングセンターと比べると、規模は小さかく、ハード面では劣っているように思えた。少なくとも、ここだけで競走馬のレベルが飛躍的に向上するとは思えない施設だった。
つまり、香港から次々と強い馬が出て来ることの理由と、この従化競馬場が関係しているとは思えない。選択と教育の成果なのかもしれないが、香港から優駿が現れるたびに、あらためて考えさせられる。
(撮影・文=平松さとし)
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