2026.04.10
レッドオーヴァルの桜花賞を安田元調教師が振り返る
2012年11月、東京競馬場の芝1400メートルで行われた新馬戦。ここで1番人気に支持されたのがレッドオーヴァルだった。
初めての実戦は2着に敗れたものの、続く2戦目の未勝利戦ではレコード勝ち。翌13年には紅梅賞も制し、チューリップ賞(GⅢ)へと駒を進めた。
「ディープインパクト産駒で、最初から良い馬でした。ストロングリターン(12年安田記念優勝)の妹ということもあり、期待は大きかったですね」
そう振り返るのは、当時レッドオーヴァルを管理していた安田隆行元調教師だ。
大きな期待を背負って臨んだチューリップ賞だったが、初の重賞挑戦ということもあり、結果は7着。それでも1番人気に支持されていたことからも、その素質の高さは広く認められていた。
安田元調教師は続ける。
「連勝して勢いに乗っていましたが、レースではうまく噛み合わず負けてしまいました。ただ、どこか悪いところがあったわけではなかったので、その後は予定通り桜花賞へ向かいました」
迎えた桜花賞(GⅠ)では、手応えを感じていたという。
「当時、勢いに乗っていたミルコ(デムーロ騎手)が騎乗することになりましたし、状態も引き続き良かったので、巻き返してくれるだろうと期待して臨みました」
ミルコ・デムーロ騎手は、それまでに一度だけレッドオーヴァルに騎乗した経験があった。それが2戦目の未勝利戦。中京競馬場の芝1400メートルで、2着に3馬身差をつける完勝を収めている。勝ち時計1分21秒5は、当時の2歳レコードだった。
頼もしいパートナーを愛馬の背に迎え、安田元調教師はこう思ったという。
「ミルコにすべて任せようと、余計なことは何も言いませんでした」
レースは後方から進み、直線勝負に懸ける形。いつも通りのスタイルで運ばれると、直線では鋭い末脚が炸裂した。内で早めに先頭に立ったアユサンをかわし、一度は先頭に躍り出るシーンを作ったのだ。
「先頭に立った時は『やった!!勝てる!!』って、そう思いました」
しかし、その直後だった。アユサンが驚異的な脚で差し返し、レッドオーヴァルはクビ差届かず2着でゴールラインを通過した。あと一歩、頂点には届かなかったのだ。
「最後に懸ける競馬がうまくいって、勝てたと思えただけに悔しかったですね」
そう振り返る安田元調教師は、さらにこう続ける。
「後の実績を見ても、距離的に1600メートルが精一杯だったと思います。ただ、自分は調教師としてクラシックを勝ったことがなかったので、その分、悔しさは大きかったですね……」
あれから干支はひと回り以上、13年の月日が流れた。それでも、その思いは今でも変わらないという。
「騎手時代も、調教師になってからも、悔しいレースはたくさんありました。でも、この桜花賞はその中でも特に印象に残る一戦です。今でも桜花賞が行われるこの時期になると記憶が蘇って、思わず唇を噛んでしまいます」
(撮影・文=平松さとし)