2025.11.13

小島太氏サクラキャンドルでエリザベス女王杯制覇

今週末、京都競馬場でエリザベス女王杯(GⅠ)が行われる。牝馬限定のこのGⅠは、現在は3歳以上を対象に芝2200メートルで争われているが、秋華賞(GⅠ)が創設される以前の1995年までは、3歳牝馬限定の芝2400メートル戦として実施されていた。
その1995年の旧エリザベス女王杯を制したのが、小島太騎手が騎乗したサクラキャンドルである。小島太氏はその後、調教師に転身し、2018年に定年で引退。騎手としては日本ダービー(GⅠ)を2度制し、調教師としても有馬記念(GⅠ)他を勝つなど、まさに名ホースマンのひとりであった。
ジョッキー引退の際、小島氏は「乗った数のわりには大きいところを勝てたと思うので、後悔はありません。満足しています」と語っていた。実際、通算8476戦に騎乗し、GⅠ級11勝を含む重賞85勝、通算1024勝を挙げたのだから、その言葉に偽りはない。
 そんな名手が、当時のサクラキャンドルでのエリザベス女王杯について、こう振り返っている。
 「思い描いていた通りの競馬ができました。手前味噌ですが、馬の気持ちに合わせて、最高にうまく乗れたと思います」
 単勝10番人気でそのオッズは26.5倍という評価を覆しての勝利。まさに小島太騎手の手綱捌きが光った一戦だった。
 ところが後年、小島氏は当時の自身の体調について、次のように明かしている。
 「良くなかったというか、正直、満身創痍という感じでした。競馬に行けばしっかり乗れていたけど、普段は手や首に痺れが残った状態で生活していました」
 若い頃の落馬の後遺症に悩まされながらも、それを一切表に出さずにGⅠを制した姿に、プロとしての矜持を感じずにはいられなかったものだ。
 そんな小島太騎手の矜持を示すエピソードが、もうひとつある。エリザベス女王杯制覇の翌年、1996年に調教師試験に合格した際のことだ。
「調教師を目指していることを、ジョッキー時代は誰にも気付かれないように気をつけました」
願書の提出などの手続きも、息子に任せていたという。現役の間は“騎手・小島太”として全うするという覚悟がそこにあったのだ。
さて、今週末のエリザベス女王杯。条件こそ当時とは変わったものの、小島太騎手がサクラキャンドルで見せたような渾身の騎乗を、今のファンもまた期待していることだろう。そんな熱いレースになることを願いたい。
(撮影・文=平松さとし)
※無料コンテンツにつきクラブには拘らない記事となっております