2025.08.27

暑熱対策

シャーガーカップに始まり、ギヨームドルナノ賞(GⅡ)、ジャックルマロワ賞(GⅠ)、英インターナショナルS(GⅠ)と、ヨーロッパでの2週間余りの取材を終えて帰国した。日本の空港に降り立って最初に感じたのは、その暑さだった。
 東京の暑さから逃げたわけではないが、私は帰国してすぐに札幌へ移動し、現在は北海道で1番のこの大都市で原稿を記している。そこで今週は、この暑さ対策について少し書いてみようと思う。
 新潟や中京では1週前まで暑熱対策として、昼過ぎの気温が高くなる時間帯を避け、朝と夕方以降にレースを行なっていた。しかし先週からは通常通りの施行に戻っていたが、正直なところ、もう少し変則開催を続けても良かったのではないかと感じた。
 同時に、状況に応じて臨機応変に対応できれば良いのに、とも思った。実際にはレース数も出走頭数も多く、関わる人も膨大である以上、簡単に変更はできないのは理解出来る。乱暴に言えば、組織が大きくなるほど小回りが利かなくなるという事だ。
 一方、先日訪れたヨーロッパではこんな出来事があった。日本でも馬券発売が行われたジャックルマロワ賞でのことなので、気付いた方も多かっただろう。本来は古馬牡馬が59.5キロ、3歳牡馬が56.5キロで、牝馬はそれぞれ1.5キロ減という負担重量だったこのレース。ところが今年は、古馬牡馬が60キロ、3歳牡馬が57キロ。牝馬は1.5キロ減で行われた。つまり0.5キロ加算されて行われたのだ。
 理由は、開催地ドーヴィル競馬場があるフランス・ノルマンディー地方での当日の気温が30度まで上がったため。日本の「酷暑」や「災害級の暑さ」と呼ばれる40度超えに比べれば大したことはないと思えるかもしれない温度だが、エアコンの普及率が低いフランスでは、30度を超えると死者が出るケースすらある。そこで主催者は騎手の健康を第一に考え「しっかり水分を摂ってください」という意図を込め、急きょ斤量の加算を決定したのだった。
 暑熱対策というと、サラブレッドを守るためと考えられがちだが、実際には人にとっても深刻な問題である。プレーヤーを守るために即断即決を下したフランスギャロの姿勢は、評価されてしかるべきだろう。
 ちなみに結果はご存じの通り、アイルランドの伯楽A・オブライエン調教師の管理馬ディエゴヴェラスケスが、C・スミヨン騎手を背に、追い込んできたノーダブルスピーチをアタマ差で退けて勝利した。本来の負担重量のままだったら、結果は違っていたのだろうか……。想像以上に暑い札幌で、ふとそんなことを考えたのだった。

(撮影・文=平松さとし)
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