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2026.10.14

スポニチアネックス

【秋華賞】宮地師 テイエムアイランで狙う初挑戦初戴冠 大番狂わせ期待「気負いはあまりない」

 水曜企画「G1 追Q!探Q!」は担当記者が出走馬の陣営に聞きたかった質問をぶつけて本音に迫る。牝馬3冠最終戦「第31回秋華賞」は大阪本社の田井秀一(33)が担当する。3連勝中のテイエムアイランで平地G1初出走を果たす宮地貴稔師(45)にインタビュー。「原点」「覚醒」「武器」の3テーマを問う。

テイエムアイランで秋華賞に挑む宮地師(撮影・中辻 颯太)

 【原点】競馬とは無縁の家庭で育った宮地師をこの世界にいざなったのはゲームと漫画だった。「ウイニングポストやダビスタがきっかけで興味を持って、93年有馬記念のトウカイテイオーの復活に感動して…。中学生だったかな」と記憶をたどる。高校卒業後、今度は生産牧場が舞台の漫画「じゃじゃ馬グルーミンUP!」が職業選択に影響を与えた。「当時はまだネットも発達していなくて、競馬の世界で働くにはどうしたらいいのか分からなかった」。意を決してオーストラリアに留学。馬の扱い方をゼロから学び、牧場勤務を経て24歳でトレセン入りした。

 初任地は武邦彦厩舎。所属して間もなく任された牝馬ラブアクチュアリーと過ごした日々が原点となる。「ゲートは出ないし、手入れもさせなくて、蹄油すら塗れないぐらいだった」。いわゆる“じゃじゃ馬”。師匠からかけられた「馬をしっかり可愛がってあげなさい。手をかけたら、馬は必ず返してくれる」の言葉を胸に必死に向き合った。築いた人馬の絆はキャリア4勝の結果として表れ、母としてもオープン馬タイセイモンストルを出した。「どんなクセ馬でも丁寧に仕事をすれば、それに応えてくれると教えてくれた。自分の器を広げてくれた」と振り返る。

 【覚醒】24年10月に開業してちょうど2年がたつ。自身がデビュー前から手がけた“最初の世代”が現3歳。その中からテイエムアイランが厩舎初の平地G1出走にたどり着いた。「自分がいいなと思った馬が競走馬になって走ってくれるのは凄くうれしいし楽しいし、何よりやりがいを感じる」。同馬との出合いは1歳時のサマーセール。「馬体はコンパクトだけど、歩きが良くてバランスも良くて、スピードがありそう」とほれ込んだ。落札した竹園正繼オーナーを木原一良元調教師に紹介してもらい、管理を任された。

 2代母レジネッタは阪神競馬場改修後、最少馬体重(432キロ)の桜花賞馬。孫娘も400キロをわずかに超える程度の小型だ。課題は食の細さ。「トレセンではどうしてもカリカリして食べなくなる。短期放牧を挟んで、牧場と連携してしっかり体を膨らましてもらって…というリズムで使うようになって、今はうまくいっている」。出走間隔を空けた直近3走は破竹の3連勝。改善策を編み出して覚醒に導いた。賞金的に秋華賞出走可否は不透明だったが、「(前哨戦は使わず)ここだけを目標に仕上げる」作戦が的中。2カ月超の間隔を確保して「ここまでは思った通りに調整できている」と胸を張る。

 【武器】3連勝は全てマイル戦。当初はそれより短い距離で活躍する姿も想像していたというスピードタイプで、直近2戦は1分32秒台の好時計で逃げ切っている。「オーナーも“G1に挑戦したい”ということだったので、“そこに向けて最大限努力していきましょう”と参戦を決めた。スタートは速いし、スピードがあるのは十分に分かっているので。その武器を生かした立ち回りになると思う」と速攻をイメージする。

 前走マイルからの秋華賞Vは第1回のファビラスラフイン(前走=NHKマイルC14着)が最初で最後。おのずとテーマは距離延長になる。「短い距離に行こうとすれば、いつでも行ける感じはあったが、調教を工夫しながら、乗り手の技術のおかげもあって距離をもたせられている。今もいい成長をしてくれていて、走るごとにパフォーマンスが上がっていく。当日いかに折り合って運べるかの勝負」。断然の人気を背負う無敗モンローウォークは好位抜け出しが必勝パターン。直後から迫り来る圧力に屈せず、アイランの小さな体が淀に波乱を呼ぶ。

 ≪取材後記≫勝ち星量産ペースが急騰した昨年、不振に陥っていた転厩馬の復活が相次いだことから、ファンの間では“再生工場”とも呼ばれた宮地厩舎。その運営の土台には円滑なコミュニケーションがある。「馬本位だった武邦彦厩舎、笹田厩舎での経験がベースになっています。スタッフには一頭一頭と向き合ってほしいと思っていて、どんなささいなことでも情報を共有できるように心がけています」と意識を明かす。

 45歳のリーダーは初めての大舞台を前にしても「走るのは馬。僕としては気負いはあまりないかな」と普段通りの物腰が柔らかいトーンは変わらない。学生時代はスキー部に所属していたというから北国出身かと思いきや、記者と同じコテコテの大阪出身。「レースはだいたいモニターで確認していて、声とか感情を出すことはあまりない。G1でも変わらないと思います」と平常心を強調するコメントも、なんだか急に“フリ”に聞こえてきた。「今はそう言っているだけかも」と笑みを浮かべる師がかれた声でお立ち台に現れたら笑ってしまう。そんな大番狂わせを期待したい。(田井 秀一)

 ◇宮地 貴稔(みやじ・たかとし)1980年(昭55)10月15日生まれ、大阪府出身の45歳。高校卒業後、オーストラリアに競馬留学。04年7月にJRA競馬学校厩務員課程入学、翌年7月から栗東・武邦彦厩舎の厩務員、11月から調教助手を務め、厩舎解散後、09年3月に笹田厩舎へ。23年12月、調教師試験合格。24年10月21日に開業し、12月7日の京都1R(ヒミノエトワール)で初勝利。JRA通算495戦36勝。