2026.08.26
スポニチアネックス
淡路島の外厩施設「フォレストヒル」に潜入!「心身の回復」から「次戦の準備まで」勝利導く
夏競馬の水曜企画は「夏色思い」。記者が夏に関するテーマを考え、深掘りする。第8回の自由研究は大阪本社・田村達人(33)が担当。奇麗な海やグルメ、観光地としても有名な兵庫県淡路島の外厩施設「フォレストヒル」に潜入した。
兵庫県南部に浮かぶ淡路島は甘みのある玉ねぎ、観光地としても知られる。栗東トレセンから馬運車で3時間半。自然豊かな海近くの南端に外厩施設「フォレストヒル」がある。渡辺正弘場長は「年間を通して比較的、気候は落ち着いています。静かで海が近いのは淡路島の良さ。暑い夏でも風があって、馬のリフレッシュ効果は大きい。トレセンでうるさかった馬も、この牧場では穏やかに過ごせています」と切り出した。
JRAが貸し付けている馬房数は調教師によって異なるが大体20前後。数は限られている。管理馬を効率良く回転させて、出走機会を増やすのが常識になった現代競馬。外厩施設は「心身の回復」から「次戦の準備まで」重要な役割を担う。「目標のレースが決まっている場合はそこに向けて、逆算しながら。緩め過ぎず、攻め過ぎずの調整が大事。精神的にも、ちょうどいいバランスを心がけています」と説明した。
16年に設立された。馬運車は大型(6頭積み)、中型(4頭積み)が1台ずつ。トレセンまでのアクセスの良さもあり、全厩舎を合わせた98馬房は常に埋まっている。「JRA調教師を含め、地方など多くの方々から競走馬をお預かりしています」と関係者からの信頼は厚い。扇風機やミストが備わっている厩舎の天井は高く、トレセンよりゆとりがある広めの馬房。屋根は遮熱塗装で外壁から室内に伝わる熱を抑制しており、3年前にエアコンも設置された。ノンストレスで過ごせるのがよく伝わる。
目玉の坂路はスタートから勾配3%。敷き詰められたチップは深く、脚元の負担を軽減している。全長1100メートルは栗東坂路(1085メートル)と比較しても、少し長い。「しっかり時計を出すことができますし、(4F)55秒台でも十分に負荷がかかる。十日(とおか)競馬(放牧から帰厩後10日で出走すること)などの場合はより速い時計で体をつくったり、ほぼ仕上げた状態でトレセンに戻しています」。他にも準備運動を行う角馬場、トレッドミルが1台、ウオーキングマシンが4台。それぞれ調教師からのリクエストは違うが、その要望に応えられる設備環境は整っている。
これまでフォレストヒルを利用した活躍馬は多数いる。19年フェブラリーSの勝ち馬インティをはじめ、20年キーンランドC、21年京阪杯を制したエイティーンガール。取材に伺った7月上旬は24&25年かしわ記念、25年さきたま杯を含む重賞9勝を挙げたシャマルの姿もあった。「僕らが目指すのは預けてくださった関係者の方々から“フォレストヒルで良かった”と言ってもらえる言葉。大きいレースも勝ちたいけど、それより携わった馬の勝利。その1勝が何よりの喜びで最も大事にしている。やりがいはあります」と笑みを浮かべた。今後もチーム一丸で信頼される牧場づくりを目指していく。
《36人スタッフ一丸で馬づくり》埼玉県出身の渡辺正弘場長は大学卒業後、馬の世界に飛び込んで30年。かつてエイシンヒカリが遠征した16年の仏G1イスパーン賞(1着)、英G1プリンスオブウェールズS(6着)に同行した。「いい勉強になりました。僕は人に恵まれていて、他にも海外の牧場で経験を積ませてもらったり、これまで培った経験が今に生きています」と振り返る。
フォレストヒルの従業員は騎乗者が16人、手入れスタッフが11人、馬運車のドライバーが2人、事務員が2人、パート社員が4人、渡辺場長を合わせて計36人。10代から幅広い年齢層が役割を分担し、効率よく作業に取り組んでいる。「何事も100%はないし、気を付けていてもミスが起こることはある。ただ、人為的なミスは絶対にしない。ささいなことでも手間をかけて、自分のやれることを精いっぱいやる。スタッフ全員が同じ認識で働いています」と馬づくりに対する思いを明かした。