2026.05.28
スポニチアネックス
【ダービー】ロブチェン“まるで王様”…力強さ増した脚元支える松若装蹄師
【見たこともない景色(4)】装蹄師は裏方で競走馬を支える職人。最高時速70キロで走る馬が能力を出し切れるように、最も大事な脚元をケアしている。ロブチェンを担当する松若勝装蹄師(57)は「僕の立場としては、無事に帰ってくるのが一番。その上で結果がついてくるとうれしい」と心境を明かす。
息子はJRA騎手の風馬。伯父には元騎手の勲さん(77年11月5日の落馬で死去)と、装蹄師として99年ダービー馬アドマイヤベガや01年皐月賞馬アグネスタキオンなどを担当した師匠の清人さんがいる。「小学生の頃に(師匠から)声をかけられたのが、この道を目指すきっかけでした」
装蹄師の養成を行う駒場学園を卒業後、20歳でトレセン入り。清人さんの下で16年間、下積み時代を過ごした。「26歳ぐらいから開業まで毎年、1人で北海道出張に行かせてもらったことが今に生きている。失敗は全て自分の責任。たくさん経験をさせてもらった師匠には感謝しかないです」と頭を下げる。苦しい時期もあったが、技術を見て学ぶ。偉大な背中を追い続けた。
師匠から独立を提案され、36歳で開業。これまで09年皐月賞馬アンライバルド、19年ダービー馬ロジャーバローズ、24&25年大阪杯を連覇したベラジオオペラなど数多くのG1馬を担当。一般的にディープインパクトのような爪の薄い馬が走ると言われるが、ロブチェンは「他の馬と比べても普通だと思います。蹄鉄もいたってノーマル。ただ、爪の形が良くて、質は凄くいい」と特長を伝える。
デビュー当初は若馬特有の緩さもあったが、実戦を重ねるごとにトモの力強さが増しているという。削蹄中はまるで王様のような立ち居振る舞い。ハイキックのような後肢を蹴り上げる行動は、「エイシンフラッシュにそっくり」と同じ黒鹿毛で、かつて担当した10年ダービー馬と姿を重ねる。
レコードで逃げ切った皐月賞は落鉄のアクシデントがあった。いろいろ要因は考えられるが、「あのようなことが起こると、やっぱり責任は感じます」と本音をもらす。この中間は細心の注意を払って作業に集中。「担当している全ての馬に言えることですが、自分のやるべきことをしっかりやりたいと思います」。レース直前まで職人としての仕事を全うする。(田村 達人)
◇松若 勝(まつわか・まさる)1968年(昭43)8月13日生まれ、鹿児島県出身の57歳。JRA騎手である風馬の父。装蹄師として99年ダービー馬アドマイヤベガを担当した伯父の清人さんの影響で装蹄の道へ。20歳で栗東トレセン入り。これまで手がけたG1馬はローレルゲレイロ、サクセスブロッケン、アンライバルド、エイシンフラッシュ、ロジャーバローズ、ベラジオオペラ。趣味は釣り。