2026.04.08
スポニチアネックス
【桜花賞】北出成人師 20年目の悲願へ!スウィートハピネスでG1初制覇を「一戦ごとに力をつけている」
水曜企画「G1追Q!探Q!」は担当記者が出走馬の陣営に聞きたかった質問をぶつけて本音に迫る。26年クラシック開幕戦「第86回桜花賞」は大阪本社・新谷尚太(48)が担当。エルフィンS勝ち馬スウィートハピネスで悲願のG1初制覇を狙う北出成人師(62)に「桜花賞」、「ゆかりの血統」、「層の厚い世代」の3項目を聞いた。
【桜花賞】北出師は兵庫県宝塚市出身。古くは宝塚ファミリーランド、そして宝塚歌劇団など華やかなイメージが強い土地柄で育った。当然、宝塚市にある阪神競馬場を舞台にした桜花賞への思い入れも強い。中でも思い出のレースには、3月に定年した佐々木晶三元調教師が騎手時代だった79年にホースメンテスコで制した桜花賞を挙げる。師は「勝った後の佐々木さんの笑顔が忘れられない。それと毎年、杉本清さんの実況が良かったよね」と懐かしんだ。
指揮官がJRA平地G1に管理馬を初めて出走させたのは、厩舎開業3年目だった08年の阪神JF(ショウナンカッサイ)。持ち前の先行力を生かして4着に粘った。翌年の桜花賞(18着)では初めてクラシックの舞台も経験。その後も桜花賞には20年にエーポス(9着)、ヒルノマリブ(15着)の2頭を送り込んだ。
今年はエルフィンSを制したスウィートハピネスで参戦。前走は最後方から直線一気で差し切りV。桜花賞の有力候補に躍り出た。「昨年の夏過ぎに栗東へ入厩させて調教を進めてきたけど、調教では左にもたれる癖を見せていた。新馬戦(1着)もそんな感じだったけど、2戦目(白菊賞2着)でハミを替えて改善した」と振り返る。暮れの阪神JFでも4着と世代上位の力を示した。「一戦ごとに力をつけてくれている」と成長力の高さを強調する。
【ゆかりの血統】スウィートハピネスの母フラルはJRA通算27戦2勝、芝の1800~2000メートルで勝利を挙げた。母も管理した北出師は「お母さんは中距離で活躍してくれたけど、ハミがかりが良くて(騎乗した)助手も“乗り味がいい”と言っていたね」と振り返る。「母と違って(距離は)マイルぐらいがいいかな。適性は違うけど、気性面や走りっぷりの良さは似ている部分が多いね」と姿をだぶらせる。
母を生産したノースヒルズとのつながりは厩舎開業2年目から。07年に山本正司師が引退したことにより、その厩舎スタッフが加わったことがきっかけとなった。スウィートハピネスの馬主・前田幸大氏は、ノースヒルズの前田幸治代表の次男。北出師は「開業当初から管理させていただいて、大変お世話になっています。(幸大氏は)おとなしくていい方ですよ」と厚い信頼を寄せる。つないだ縁を大切に、ゆかりの血統で大舞台に挑む。
【層の厚い世代】月日を重ねて築き上げてきた土台が大きな花を咲かせようとしている。北出厩舎は昨年JRA22勝を挙げ、14年の24勝に次ぐ、勝ち星を挙げた。22勝のうち現3歳世代が出走した2歳戦は【8・5・2・43】の好成績で、現在9頭が勝ち上がっている。僚馬カタリテは2歳戦を2連勝し、今年はブルーバードC2着、京浜盃3着と交流重賞でも活躍している。北出師は「たまたまやで」と笑って謙遜するが、日々の努力が結果につながっていることは間違いない。
厩舎スタッフと積極的に意見交換し、追い切り日以外の稽古でもB(ダート)コースで縦列調教を取り入れるなど丹念に乗り込む。今年で開業20年目を迎えたが、常に新しいことへのチャレンジを続けている。
3歳世代は他にも縁がある血統馬が多く所属。「開業して今年で20年。縁の血統が入厩してくることで、従業員も愛着を持って接してくれる。そういう面も含めて、今年の3歳世代はうまくかみ合ったと思うよ」と力を込める。これまでJRA平地G1に延べ24頭を送り出し、4着が最高着順(4回)。節目の20年目を迎え、積み重ねてきた努力がG1舞台で結実する。
≪取材後記≫北出師は自分が専門紙の時計班だった時からお世話になっているが、スポニチ中央競馬班になってからは、さらに取材に協力していただいている。企画の取材交渉に向かった際、「嫌や。断る」と笑顔で軽くあしらわれた。それでも二言目には「いつがええの?」と快くOKしてくれた。
そんな指揮官はスポニチ読者でもある。栗東のスタッフではオサムさんが特に好きらしい。口癖のように「オサムちゃんのボキャブラリーを身につけや」と頼りない記者のことを常に気遣ってくれる。また、厩舎にも温かいスタッフが多い。攻め専(調教専門)を務める鳴海助手、ナリタブライアンを手がけた村田助手、記者の住まいと実家が近所の森沢助手らいつも笑顔で迎えてくれる。取材には丁寧に答えてくれ、それが終われば世間話で盛り上がる。その時間がまた楽しい。チーム一丸となって厩舎初となるG1制覇を成し遂げ、北出師の“勝った後の笑顔”を目に焼き付けたい。(新谷 尚太)
◇北出 成人(きたで・よしひと)1964年(昭39)1月11日生まれ、兵庫県宝塚市出身の62歳。88年1月にトレセン入り。大根田裕也厩舎で厩務員となり、90年4月から調教助手。02年3月からは大久保正陽厩舎へ。05年に調教師免許を取得し、06年3月に開業。14年J・G2京都ハイジャンプ(ルールプロスパー)でJRA重賞初制覇。JRA通算5404戦335勝(重賞6勝)。
≪精神面も安定「雰囲気いい」≫スウィートハピネスは火曜朝、坂路を駆け上がった。コンタクトを取った中井助手は「雰囲気はいいし、帰厩時と比べて、我の強いところは少しずつマシになっている」と精神面の安定を伝えた。舞台は前々走の阪神JF4着で経験している阪神マイル。「跳びが大きいので、長くいい脚を使える。外回りは合うと思います」と力強かった。