2026.03.04

スポニチアネックス

フォーエバーヤングの快挙に思うJRA賞選定における記者の責任

 日々トレセンや競馬場で取材を続ける記者がテーマを考え、自由に書く東西リレーコラム「書く書くしかじか」。今週は東京本社の鳥谷越明(56)が担当する。JRA賞は昨年、フォーエバーヤングがダートホースとして史上初めて年度代表馬に選出された。投票者の一人として、同賞の意義を考察した。

<2025年度JRA賞 授賞式>年度代表馬・フォーエバーヤングの(左から)矢作師、藤田オーナー、坂井

 JRA賞の競走馬部門の投票は、競馬記者にとって名誉な仕事。スポーツ新聞に関しては、各記者クラブ在籍3年以上の記者に投票権が与えられている。厩舎関係者や馬主はもちろん、競馬ファンにとっても重大な関心事。常に国政選挙なみの緊張感で投票してきた。

 その歴史あるJRA賞で昨年、史上初めてダート戦にしか出走していないフォーエバーヤングが年度代表馬に選ばれた。中央競馬が芝をメインに行われているのは年間G1数(芝22、ダート2)からも明らか。だからこそ、JRA賞の部門賞に「最優秀芝ホース」はないのに「最優秀ダートホース」はある。こうした芝の優位性を乗り越えて年度代表馬となれたのは、難攻不落のイメージすらあった米国最高峰レース「BCクラシック」を日本馬で初めて制したインパクトが強烈だったということだろう。

 現実的には、芝で圧倒的な好成績の馬がいなかったのも大きい(最高でもG1・2勝)。もし凱旋門賞を勝つ馬が出ていたら?野球やサッカーなど他のスポーツでもそうだが、賞レースは相対的なもの。MVPに選ばれるかはライバルの成績次第という側面がある。

 もちろん、フォーエバーヤングの活躍がダート競走の価値を飛躍的に高めたのは間違いない。今後、JRA賞も時代に合わせて変化する必要性が生じてくるだろう。ただ現時点では、JRAの競走体系自体が大きく変わったわけではないだけに、部門賞の新設や全体の見直しは早計だと思う。

 少し話はそれるが、現行の投票方式には批判的な声もある。例えば先日、知人から「この投票は矛盾している」と指摘されたのが年度代表馬フォーエバーヤング、最優秀4歳以上牡馬は別の馬とする投票。フォーエバーヤングも4歳以上牡馬(牡5歳)のカテゴリーに入るだけに、確かに“ダブルスタンダード”と言える。

 しかし、ルールで決められているのは「年度代表馬は各部門賞に投票した馬の中から選ぶ」ことだけ。つまり最優秀ダートホースにフォーエバーヤングを選んでいれば、ルール違反ではない。年度代表馬に投票できる馬を性齢別の部門賞(2歳、3歳、4歳以上の牡牝6部門)に選んだ馬に限定すればこうした投票はなくなるが、そこまでルールで縛るのもどうだろうか。

 物事にはさまざまな見方があり、記者の裁量に任せることで、多様な意見を集約して受賞馬を決めることができる。大切なのは、なぜその馬なのか、根拠をしっかりと説明できること。それが投票権を与えられている記者の責任だと思う。

 ◇鳥谷越 明(とりやこし・あきら)1969年(昭44)7月9日生まれ、群馬県出身の56歳。93年入社。営業部門を経て99年からレース部中央競馬担当。02年10月から19年12月まで17年3カ月間、東京本社予想を担当。20年からレース部長を務め、25年10月に中央競馬担当記者に復帰した。