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2025.12.17

スポニチアネックス

【追憶の朝日杯FS】09年ローズキングダム バラ一族がついに…橋口弘次郎師、悲願のG1制覇

 「バラ一族」という言葉を今の若い競馬ファンは知っているのだろうか。繁殖牝馬ローザネイから始まった一族。その娘ロゼカラーはデイリー杯3歳S(当時)を勝ち、ロゼカラーの弟ロサードは新潟3歳S(当時)を勝った。しかしクラシックには手が届かなかった。

朝日杯FSを制したローズキングダムの背でガッツポーズの小牧太。左は橋口弘次郎師

 強い馬は出るがG1には縁がない。その流れは世代を経ても続いた。ロゼカラーの娘ローズバドはフィリーズレビューを勝ったがオークス、秋華賞、エリザベス女王杯いずれも2着。その弟ローゼンクロイツも菊花賞はディープインパクトの前に3着で涙をのんだ。

 この頃、栗東の坂路監視タワーで橋口弘次郎調教師が何度ボヤいたか。「オレは本当にツイてない。血統に申し訳ないよ」。そんな名将の苦悩をついに吹き飛ばしたのがローズバドの子、ローズキングダムだった。

 新馬、東スポ杯2歳S(当時G3)を連勝して臨んだ大一番。小牧太騎手にも期するものがあった。「自分の馬が一番強い。自信を持って乗らなくては」。兵庫所属時代、ローズバドをフィリーズレビュー勝ちに導いたのが小牧。バラ一族にG1をという思いはしっかりと持っていた。

 リベンジの思いもあった。04年朝日杯。同じ橋口弘厩舎のペールギュントで挑んだが、外々を回り続けるロスの多い騎乗で3着。1番人気に応えられず痛恨の思いを抱いた。あの悔しさを振り払うチャンスだった。

 レースは完勝だった。道中は8番手付近につけたローズキングダム。4角手前では馬群のまっただ中で、どこから抜けるかの勝負だったが、外がスムーズに空いた。先に先頭に立ったエイシンアポロンを外からねじ伏せ、残り100メートルで先頭に立って押し切った。

 「悲願という言葉がぴったりだね」。橋口弘師が笑みを浮かべた。ここまでバラ一族は重賞を15勝。一族34度目の挑戦で初のG1制覇。重賞勝ち馬の全てを管理してきた指揮官は「思った以上に強かった。母(ローズバド)にそっくりだよ」と頬を緩めた。

 ローズキングダムは翌年、指揮官のもうひとつの悲願だったダービー制覇に挑んだが、エイシンフラッシュの前に首差2着。それでも3歳で挑んだジャパンCで繰り上げながら古馬G1制覇をつかんでみせた。

 橋口弘師を慕う記者たちは小声で歌ったものだ。「バラが咲いた、バラが咲いた、真っ赤なバラが~」。ジャパンCのその日、ローズキングダムは3枠6番。武豊騎手はバラ色のヘルメットをかぶっていた。