2025.10.24

スポニチアネックス

【菊花賞】“枠順”にドラマ…23年大外ドゥレッツァ駆け抜けた

 【競馬人生劇場・平松さとし】ライアン・ムーア騎手に「どの枠が良いか?」と尋ねると「直線競馬でない限りは……」と前置きした上で「どの国の、どの競馬場のどの距離でも内枠が良いです」と答える。世界中でインを突いて数々の大仕事を成し遂げてきた名手の言葉だけに、説得力がある。

ドゥレッツァ

 さて、2年前の菊花賞では、その“枠順”を巡って興味深いドラマがあった。この年、3冠最終戦となる菊花賞は17頭立てで行われた。1番人気は皐月賞を制し、ダービーでも2着だったソールオリエンス。2番人気はダービー馬タスティエーラ。この人気順はある程度予想通りだったが、思ったほど注目されていなかったのがドゥレッツァだった。

 デビュー戦こそ3着に敗れたものの、その後4連勝。直前には2200メートルの3勝クラスを楽勝しており、上位2頭に迫る人気を集めるかと思われたが、結果は4番人気にとどまった。

 人気が伸びなかった理由の一つとして挙げられたのが、大外の17番枠。3000メートルの長丁場で終始外を回らされることを懸念する声がささやかれた。管理する尾関知人調教師も当時こう語っていた。

 「グローリーヴェイズ(18年菊花賞)が大外18番で5着に敗れました。その後の天皇賞・春では2着に健闘したことを考えると、やはり大外枠の影響はあったと思います」

 ところが、結果は良い意味で予想を裏切るものとなった。ドゥレッツァは早めに先頭に立ち、一度は番手を下げたものの、直線で再び進出。最後は2着のダービー馬タスティエーラに3馬身半の差をつけ、悠々と先頭でゴール板を駆け抜けた。

 レース後、尾関調教師は次のように振り返っている。

 「ここまで少頭数のレースばかりだったので多頭数が心配でしたが、大外枠だったおかげでモマれずに済んだのが良かったです」

 “不利”と思われた大外枠が、結果的には“幸運”に働いた。やはり競馬は面白いと思ったものだ。

 さて、今週末に行われる今年の菊花賞。どの馬がどの枠になってどんなドラマが生まれるか。注目したい。 (フリーライター)