2025.10.20

スポニチアネックス

【秋華賞】池江泰郎氏 レイデオロのダービーほうふつ…道中で動いたルメールの勇気

 【池江泰郎 匠の解説】最終4コーナーの景色は逃げるエリカエクスプレスを単独の2番手で追走するのがエンブロイダリー。結果として、この2頭の攻防となるのだが特筆すべきはエンブロイダリーが最初から2番手に収まったわけではなく、鞍上ルメールが3列目の外から向正面で動かし、3コーナーで2番手をキープ!ここが流れを引き寄せたポイントだった。

<京都11R・秋華賞>レースを制したエンブロイダリー(撮影・中辻 颯太) 

 G1の大舞台で道中、ポジションを上げるのは勇気が要る。“動かす”ということは多少なりとも、そこで脚を使うので直線の攻防に響きやしないか…と脳裏をよぎれば、動くに動けないものだ。しかし、ルメールは逃げ馬に優位なペースになっていることから、脚を削ってでも勝つには2番手の位置取りが必要との判断を瞬時にしたのだろう。

 ルメールの騎乗馬のG1で私はこの勝ち方はどこかで見たような…と思ったので記憶をたどってみるとレイデオロとのコンビで勝った17年日本ダービーがそうではなかったか?確か向正面から押し上げて逃げ馬を視界に入れるレースだったはずだ。要は我慢するところは我慢するし、同時に動く勇気と判断も備えた騎乗だと強調しておきたい。

 エリカエクスプレスは最終4コーナーを回った時は勝ったか!?とさえ思わせる粘り腰。2着は悔しいだろうが、武豊君は今秋のスプリンターズSでも伏兵視された騎乗馬(7番人気ジューンブレア)で逃げて2着、この秋華賞も同様に5番人気で奮闘。サッとハナを奪い、最初のコーナーでは2番手グループがだんご状態になっていたが、まるで背中に目があるかのようにペースに、はめてしまったのだからさすが。小さなマジック発揮!?としておこう。

 1番人気カムニャックの敗因は当事者でないと分からないので迂闊(うかつ)なことは言えない。ただ、誰の目にも発汗があってゲート内でも落ち着きがないしぐさだったことは明白。桜花賞馬とオークス馬は明暗がくっきり分かれる結果になった。(スポニチ本紙評論家)