2025.10.16

スポニチアネックス

【秋華賞】後輩のためにも…パラディレーヌに託す森田助手の思い

 日々トレセンや競馬場など現場で取材を続ける記者がテーマを考え、自由に書く東西リレーコラム「書く書くしかじか」は栗東取材班の田村達人(32)が担当する。「第30回秋華賞」に担当馬のパラディレーヌを送り込む森田重樹助手(52)の生い立ちに迫った。

パラディレーヌの走りに期待を抱く森田助手

 千田厩舎の森田助手はキャリア30年以上。秋華賞は担当馬パラディレーヌを送り込む。「まずは無事に帰って来てほしい。その上で結果がついてくれば最高です」と心境を明かした。

 地元の栗東高校を卒業後に若くしてトレセン入り。かつて所属した池江泰郎厩舎では09年青葉賞を制し、続くダービーで5着に入ったアプレザンレーヴなど多数の実績馬に携わった。中でも一番の思い出はディープインパクトがラストランの有馬記念で有終の美を飾った06年12月24日。同馬の半弟で担当していたニュービギニングが同日の中山6RホープフルS(当時はオープン特別)を勝った。森田助手は「ディープの現役最後の日に兄弟で勝つことができた。記念だから、とディープの引き手を引っ張らせてもらったのがいい思い出。(池江泰郎)先生にはいい馬ばかり担当させてもらい、本当に感謝しかないです」と頭を下げる。

 11年に池江泰郎師の定年に伴い、新規開業の千田厩舎に移った。パラディレーヌはキズナ産駒で父の父がディープインパクトだから縁がある血統。元々、後輩の仁岸助手が担当していたがデビュー前に調教中の落馬で大ケガを負い、森田助手が担当することに。「当時からずっと彼は“この馬は走ります”と期待していた。かわいい後輩で僕は彼が帰ってくるまでの代わり。帰ってきたら彼にバトンを返します。それまではしっかり責任感を持って、仕事をやる」と思いは強い。普段から連絡を取り合い、今は愛馬の活躍を喜んでいるという。現在は病院を退院し、普通に歩くこともできるが大きな体の馬を扱う仕事。万全な状態での復帰に向け、リハビリに励んでいる。

 これまで重賞制覇はないが春は3月フラワーCが2着、5月オークスが4着と健闘。世代上位の力を秘めている。秋初戦だった前走ローズSはスタートで大きく出遅れた上に直線は詰まり、それでも0秒5差8着と着順ほど負けていない。森田助手は「不完全燃焼だった。まともなら、もう少し際どかったと思います」と振り返る。久々だった前走から筋肉量がグッと増し、毛ヅヤは一段と良化した。「一度使ったことで、いい意味で気合が入った。上積みを感じる」と自信を持って送り出す。舞台は全2勝を挙げる京都。遠くから見守ってくれている後輩のためにも――。熱い思いをG1舞台にぶつける。

 ◇森田 重樹(もりた・しげき)1973年(昭48)7月10日生まれ、滋賀県出身の52歳。中学時代は水泳部に所属していた。栗東高校の馬術部で初めて馬に触れ、卒業後にトレセン入り。小原伊佐美厩舎、吉岡八郎厩舎、池江泰郎厩舎を経て、11年から千田厩舎に所属した。担当馬はパラディレーヌの他に3歳ユウトザレン。趣味は旅行。

 ◇田村 達人(たむら・たつと)1992年(平4)11月12日生まれ、大阪市城東区出身の32歳。高校卒業後は北海道新ひだか町のケイアイファームで育成&生産に携わった。