2025.07.16

スポニチアネックス

根強い人気“千直の王”は「相馬野馬追」にも参加

 日々トレセンや競馬場で取材を続ける記者がテーマを考え、自由に書く東西リレーコラム「書く書くしかじか」。今週は東京本社の後藤光志(29)が担当する。現在、夏競馬まっただ中。来週末からは新潟開催がスタートする。夏の越後路を飾る名物レースといえば直線芝1000メートルで争われる重賞アイビスサマーダッシュ。19年Vを皮切りに5年連続で出走し“千直の王”として個性的な活躍を見せたライオンボスの今を聞いた。

野馬追いに参加するライオンボス(佐藤代表提供)

 夏が来るたびに思い出す“百獣の王”。現役時代は屈指の個性派としてファンの人気を集めたライオンボス。狙った獲物を追い詰めるような前進気勢あふれる走りが印象的だった。新潟千直では【4・3・0・6】。アイビスサマーダッシュには19年の初参戦Vを含めて【1・2・0・2】。直線競馬で無類の強さを発揮した。

 同馬は現在、福島県飯舘村にあるデイズクラブでけい養されている。23年9月に中央登録抹消後、川崎へ移籍。昨年10月に地方登録を抹消、引退後に同牧場に引き取られた。管理する佐藤弘典代表(62)は「引退が決まってから引き取りました。当初は少し体に不具合があった。少し疲れがあったようで、しばらく養生していました。こちらに来てからは毎日放牧させて過ごしていますよ。まだ違和感はあるが、以前よりしっかりして良くなってきた。馬自体は元気です」と現状を伝える。

 地元で開催される伝統行事「相馬野馬追」の行列にも参加。堂々とした晴れ姿を披露した。「おとなしい馬。あれだけ短い距離を走ってきた馬にしては、人に対して穏やかなものを持っています」と佐藤代表。自然に囲まれた福島で第二の馬生を送っている。

 引退後もファンの人気は根強い。「先日も新潟から来たファンがいましたね。現役時代、競馬場で見ていたという方。凄く人気がある馬なんだなと思う。ファンの記憶、思い出に残る一頭になるのはうれしいこと」。佐藤代表も思わず声を弾ませる。牧場にはライオンボス以外にも、18年JBCスプリントを制したグレイスフルリープなど7頭ほどの馬がけい養中。「馬が好きで愛情を持ってやっています」と、精力的に引退馬支援の活動に取り組んでいる。

 意外かもしれないが、福島県内には他にも元競走馬が多くけい養されている。記者も福島支局時代にはノーリーズン(02年皐月賞)、ウインクリューガー(03年NHKマイルC)、ロジック(06年同)、バシケーン(10年中山大障害)と多くの馬を取材した。今後も「あの馬、今ここにいたのか」という“発見”があるかも。読者の皆さんも、ぜひ夏休みを利用して気になる馬に合いに行ってみてはいかがですか。

 ◇後藤 光志(ごとう・こうし)1995年(平7)12月8日生まれ、愛知県出身の29歳。中大文学部を卒業後、20年にスポニチ入社。整理部、福島支局を経て昨年4月から競馬担当。