2025.05.09

スポニチアネックス

27年前 エルコンドルパサーがダービーに出ていたら

 【競馬人生劇場・平松さとし】今週末、東京競馬場ではNHKマイルC(G1)が行われる。今回が30回目、3歳のマイルのG1としてすっかり確立。しかし、開設当初は少し話が違った。以前はNHK杯として2000メートルのG2。日本ダービー(G1)へつながるトライアルレースだった。それが現在の1600メートルのG1になったのには理由があった。

98年のNHKマイルC 笑顔で手をふるエルコンドルパサー的場均騎手

 当時、日本ダービーをはじめとしたクラシック競走には外国産馬の出走権がなかった。現在と違い強い外国産馬がたくさんいた時代だったこともあり「強い馬たちの集うG1がないのはおかしい」という声が上がるのは必然だった。それを受け、外国産馬も出走可能なG1としてNHKマイルCが新設されたのだ。

 実際、第1回から6年連続で外国産馬が優勝。その中にはシーキングザパールやクロフネといった個性派がいたのだが、第3回の勝ち馬エルコンドルパサーもまた強烈な輝きを放った馬だった。

 デビューからNHKマイルCまでの戦績は5戦5勝。秋初戦の毎日王冠(G2)こそサイレンススズカの逃げ切りを許し2着に敗れるのだが、続くジャパンC(G1)では外国馬ばかりか前年の年度代表馬エアグルーヴや同期のダービー馬スペシャルウィークを相手に勝利。翌年はフランスへ遠征しサンクルー大賞典(G1)勝ちや凱旋門賞(G1)2着の活躍を披露した。

 さて、そんなエルコンドルパサーだが、ジャパンCに臨む前に渡邊隆オーナーが「NHKマイルCと同じ距離のマイルCS(G1)へ行くか、初の2400メートルとなるジャパンCにするか?」と迷っていると、二ノ宮敬宇調教師(引退)は次のように伝えたという。

 「2400メートルでも勝てると思いますからオーナーの好きな方を選んでください」

 先述した通りこの年のダービーはスペシャルウィークが勝っているのだが、果たしてエルコンドルパサーに出走権があればどんな名勝負となったのだろうか。あれから27年目となる今でも、そんな想像をかき立てられてしまう。 (フリーライター)