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2025.05.07

スポニチアネックス

【追憶のNHKマイルC】07年ピンクカメオ 17番人気のアップセット 内田博幸の冷静ジャッジに導かれ

 18頭立て、17番人気馬の激走だった。

2007年のNHKマイルCを制したピンクカメオ

 89年以降のG1で17番人気以下の馬が勝ったのは3例のみ。

 89年エリザベス女王杯(現在の秋華賞)のサンドピアリスが20頭立て20番人気。

 92年の同レース・タケノベルベットが18頭立て17番人気。

 そして07年NHKマイルCのピンクカメオだ。

 全て3歳牝馬によるものなのが面白い。また、他の2例はともに牝馬限定戦のエリザベス女王杯でマークされたもの。牡馬相手に大番狂わせを演じたのはピンクカメオだけなのだ。

 その日は雨だった。7枠14番から好スタートを決めたピンクカメオだったが、先団でポジション争いを繰り広げる他馬を横目に、スッと位置を下げていった。

 道中13番手。当時、大井競馬に所属し、この日はJRAへのスポット参戦だった内田博幸にとって予定通りの位置取りだった。「テン乗り(初騎乗)だったが、レースのビデオは見ていた。最初から直線勝負のつもりだった」

 4角を14番手で回って直線へ。ここで内田が最高の判断を下す。前方には馬が5頭。さばけるかどうかは疑わしい。じりじりと大外へと移動し、伸び伸びと走らせることを選んだ。水を含んだ馬場にしては道中のペースが速かったことも織り込み済み。外に出すまでの時間を考慮しても間に合う計算だった。

 「うまく脚をためることができた。外からグングン加速していった時、勝てるのではないかと思った」

 残り250メートルで1番人気ローレルゲレイロが先頭に立つ。だが、本当の勝負はそこからだった。イン2頭目からシベリアンバードがかわす。そこに襲いかかる最低18番人気のムラマサノヨートー。そして、外からピンクカメオが来た。あっさりとかわす。内田の右腕が上がった。

 「何度もG1に乗せてもらっているのに結果が出なかった。勝つ時はこんなものなんですかね」。中央G1はこれが23度目。そこまで思い悩む数ではない気もするが、そこは真面目な内田のこと。勝てたことを心から喜んだ。

 勝因については謙遜含みでこう分析した。「僕は地方と中央の両方で騎乗している。乗り鞍が多いし、経験も積める。そのことが今回の勝利に生きたのだと思う。初めて勝ったことで、また勝ちたいという欲が出てきましたね」

 内田がJRAへと移籍するのは翌08年の3月。10年にはエイシンフラッシュで日本ダービーも勝つこととなる。