2024.11.29
カネヒキリとルメール騎手のジャパンCダート
今週末、中京競馬場ではダートのGⅠ、チャンピオンズCが行われる。
同競走の前身はジャパンCダート。東京競馬場のダート2100メートルを舞台に2000年に創設。その後、08年に阪神競馬場のダート1800メートルに移行されたのを経て、14年から中京ダート1800メートルで行われる現在の形となった。
阪神で開催されたのは08年から13年の6回。この最初の年と最後の年に勝利したのがクリストフ・ルメール騎手。とくに1回目に優勝した際、タッグを組んでいたカネヒキリ(栗東・角居勝彦厩舎、解散)は馬自身3年ぶり2度目の制覇という事もあり、その強さに、目を丸くして次のように語っていた。
「僕が乗ったダート馬の中では現時点で最強です」
先述した通りカネヒキリは3年前の05年に東京競馬場で行われたジャパンCダートを勝利していた。当時の鞍上は武豊騎手。この天才騎手とのコンビでは他にもジャパンダートダービー(JpnⅠ)やダービーGP(JpnⅠ、いずれも05年)、フェブラリーS(GⅠ、06年)等を優勝。当時のダート最強馬の地位を確立していた。
しかし、06年6月の帝王賞(JpnⅠ)で2着した後、屈腱炎を発症。08年11月の武蔵野S(GⅢ)が実に約2年4カ月ぶりの競馬で、ここを9着に敗れた後のこのジャパンCダート参戦だった。
『過去の栄光はすさまじいが、もうピークは過ぎ去った』とファンが考えても仕方のない臨戦過程で、実際、4番人気に甘んじた。実績を考えれば、かなり人気を落としていたといっても過言ではない下馬評だと言えるだろう。
ところが、ゲートが開くとファンもルメール騎手も驚かされる事になる。
「頭の良い馬なので、容易にコンロトール出来て、乗りやすかったです」
カネヒキリ自身が持っているフィジカル面でのポテンシャルの高さに加え、そんな操縦性がこの時の勝因になったと言う。
「というのは、この年はアメリカの馬が参戦していて、先行していました。アメリカは左回りの競馬場ばかりなので、右回りの阪神ではコーナーで外へ膨らむと思い、あえてそのインを突きました。すると、予想通り膨らんだので、カネヒキリはロスなく内を回る事が出来たんです」
「アメリカの馬の外へ行ったら、膨らんだ時に一緒に持って行かれて勝てなかったと思う」と続けた自分自身のファインプレーを、喜んだのだが、嬉しかった理由がもう1つあった。
「この年の僕はまだ短期免許での来日だったわけですが、前年までに比べるとなかなか勝てず苦しんでいました」
実際、このジャパンCダートの前日までルメール騎手のこのシーズンの成績は85戦して9勝。極端に悪いわけではないが、1日に2勝以上した日は皆無で、途中17戦にわたり連対すら出来ない期間もあった。彼なりに苦しんだシーズンだっただけに、大一番での勝利は尚更、嬉しかったようだ。
さて、現在は通年免許を取得した同ジョッキー。今年は大井のミックファイアと共にチャンピオンズCに挑む。果たして、またもファンを驚かせる騎乗を見せてくれるのか。期待したい。
(撮影・文=平松さとし)
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