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2023.12.06

【追憶の阪神ジュベナイルフィリーズ】98年スティンガー 連闘で手にしたデビュー29日での頂点

 トライアルを使うことなく、狙ったレースだけを使って、しかも勝つ。それが現代競馬だ。たとえばリバティアイランドは阪神ジュベナイルフィリーズ→桜花賞→オークス→秋華賞と使って、G14連勝&牝馬3冠を決めた。

<第50回阪神3歳牝馬S>スティンガー・無傷3連勝で3歳女王になったスティンガー

 そこで今回は、昔の競馬を懐かしむ意味で、現代競馬と真逆の極端な例を示したい。連闘でのG1制覇。98年、リバティアイランドも勝った阪神ジュベナイルフィリーズの前身「阪神3歳牝馬S」の覇者、スティンガーだ。

 96年生まれのサンデーサイレンス産駒。まずは98年11月8日、東京での新馬戦を勝った。中2週で牝馬限定の赤松賞へ。ここを2馬身半差で楽勝すると、連闘で阪神3歳牝馬Sに向かった。

 報道陣は大いに驚いた。スティンガーは藤沢和雄厩舎所属。同厩舎といえば、95年4歳牝馬特別(現フローラS)を制したサイレントハピネスを「勝ったとはいえ10キロ減。オークスは中2週で、どこまで馬体が回復するか分からない。1週延ばしてダービーに向かうことも考えたい」(同師)という理由でオークスを回避(結局、夏のクイーンSまで休養)したことがある。無理は絶対にしない厩舎だ。

 その藤沢和師が、よりによってサイレントハピネスの全妹であるスティンガーで連闘するという。驚く報道陣に同師は丁寧に説明した。

 まず、赤松賞の勝ちっぷりが良く、疲れが残らなかったこと。調教師自身が馬の様子をチェックし、赤松賞で乗った岡部幸雄騎手(当時)からも「きついレースではなかった」との言葉を得たこと。その上で輸送時間を減らすため、美浦を深夜に出発して阪神へと移動した。当日の馬体重は8キロ減。手を打った成果は十分にあった。

 レースも安心して見ていられた。道中は13頭立ての11番手だったが、4角手前で馬群がグッと凝縮した時に外からスムーズに上がり、直線を向いてじきに先頭。追いすがるエイシンレマーズを振り切って2馬身差の完勝だった。無傷連勝中の良血馬が、連闘策が嫌われたか3番人気。2着エイシンレマーズは11番人気で馬連は1万5430円ついた。

 これが何とデビュー29日でのG1制覇。藤沢和師は余裕の表情で「1週間に2度も走らせましたが、よく頑張ってくれました」と語った。むしろ、横山典弘騎手の方が驚いた様子で「強いね。人間の方はヒヤヒヤだったけど、馬はケロリとしていたよ。これは来年、強くなるね」と語った。

 牝馬の連闘。当時ですら、タブーとされていたが、日本競馬に革命を起こした指揮官は、固定観念にとらわれず、状況を見極めながら物事を進めていけば、難関も突破できることを示した。そんなスティンガーは今年9月21日、老衰のため天へと召された。