近頃の“競馬ばなし”で枕言葉のように使われるワードに「牝馬の時代」があります。“永遠の女傑”ウオッカがダービーをブチ抜いたのが2007年。そこから彼女は安田記念を2勝、天皇賞(秋)、ヴィクトリアマイルと東京競馬場を舞台に牡馬を向こうに回し、遂には日本最高峰のジャパンCも制覇して「牝馬の時代」への重い扉を開きます。以降もジャパンCはブエナビスタ、ショウナンパンドラが勝ち、ジェンティルドンナとアーモンドアイはそれぞれ2勝して、この10年間で牝馬6勝と牡馬をリードしています。

 

先日の香港チャンピオンズデーの看板レースG1・クイーンエリザベス2世Cを勝ったラヴズオンリーユー、その前はG1・ドバイシーマクラシックでクロノジェネシス、ラヴズオンリーユーが世界の賞金王ミシュリフを最後の最後まで苦しめました。宝塚記念と有馬記念でオーストラリア最高峰コックスプレートをサンドイッチして多国籍G1ウイナーに輝いたリスグラシューの存在も忘れられません。国内はもちろん、国際舞台でも日の丸牝馬陣の価値は日増しに高まるばかりです。

 

最新の国際ランキングでは、芝とダート双方でトップG1を勝利したミシュリフが世界一にランクされていますが、牝馬では土つかずの6連勝でG1・大阪杯を圧勝したレイパパレと、ダートの米三冠第2戦に位置づけられている昨年のG1・プリークネスSで牡馬陣を一蹴し、今季もいきなりG1勝ちで好スタートを切ったスイススカイダイヴァーが筆頭にピックアップされています。

 

これだけ評価を高めている“ナデシコ軍団”ですが、たまたまなのか?勝利から遠ざかっているレースがあります。今週おこなわれる天皇賞(春)などもそのひとつです。これまで80回の歴史を重ねてきた伝統と格式のレースですが、牝馬は68年前と半世紀を軽く上回る1953年のレダが唯一の優勝馬です。というと、3200mのマラソンレースは牝馬には過酷すぎる?そんなお話になりそうですが、レダの2着に牝馬のクインナルビーが続いたように、この1950年代の牝馬たちは実は女傑揃いでした。レダの同期には桜花賞とオークスの二冠馬スウヰイスーが人気を誇っていました。大女優・高峰三枝子さんの愛馬で華やかなスターホースでしたが、安田記念の前身・安田賞連覇など実力のほども一級品の名牝でした。

 

天皇賞(春)は出走馬自体が希少だったのですが、当時は同じ距離3200mでおこなわれていた天皇賞(秋)では、レダが勝った秋にはクインナルビーが雪辱を遂げています。もちろんこれでは終わらずオパールオーキット、セルローズと続き、その翌年のガーネットは天皇賞と有馬記念を連勝して有終の美を飾っています。「第1次牝馬の時代」と言っても過言ではないでしょう。

 

「第2次牝馬の時代」の勢いが、レダ以来達成されていない天皇賞(春)制覇を実現するのでしょうか。楽しみな日曜日になりそうです。