皐月賞のエフフォーリアは想像以上に強い競馬をしました。非常に落ち着いた立ち居振る舞いに終始して、道中はロスを最小限に抑えるクレバーな走りに徹していました。そこで溜めに溜め込んだ余力を直線で爆発させ、後続馬群を一瞬で3馬身突き放し、抵抗の暇を与えないまま閃光のようにゴールを駆け抜けました。レースを重ねるごとに身体的精神的成長を着実に積み上げて高い完成度の鎧を我がものとして、そのポテンシャルは奥の深さを満々とたたえ、紛れもない本物であることを感じさせます。

 

馬も偉いが、手綱越しに思いを通わせた横山武史ジョッキーも“鞍上鞍下、人馬ともに彗星現る!”を強烈に印象づけました。お父さんの横山典弘騎手もセイウンスカイの背中で99年の皐月賞と菊花賞の二冠を制覇していますが、思えばスペシャルウィーク、エルコンドルパサー、グラスワンダーなど日本競馬史上の最強メンバーがくつわを並べた世代であったことを思えば、その価値の高さは富士山級だったかもしれません。エフフォーリア世代も、その域まで達してくれると競馬がますます面白くなります。

 

さらに驚かされるのは、父エピファネイアのロベルト系らしい爆発力!数字的には通算6つ目の重賞勝ちで、とくに傑出した印象は受けないのですが、特筆すべきはそのうちG1が4勝という驚くべき破壊力です。種牡馬としては同期のキズナは通算勝利数、重賞勝ち数でエピファネイアを軽く上回っています。重賞での勝ち距離も1200m〜3000mと幅広く、ファンにとっては頼もしい限りです。野球に例えれば、安定感抜群のアベレージヒッターといったところでしょうか。対してエピファネイアは、正真正銘の一発長打ホームランバッターであり、ここぞ!のチャンスには滅法強いクラッチヒッターの趣です。

 

これらの特質を受け継いでエフフォーリアは、安定感抜群で取りこぼしの少ない先行脚質に出て、距離が延びても苦にしない重厚感溢れる血統的背景に恵まれています。皐月賞は稍重馬場での持久力が問われるパワー勝負でしたが、良馬場の決め手比べでも共同通信杯や百日草特別で極上の切れ味を披露しており、死角らしい死角が見当たりません。今後、予想外の”死角”を鋭く攻め立てる“刺客”は出現するのでしょうか?その可能性は極めて微小でしょうが、もし出現するとすれば、青葉賞、京都新聞杯といった“ダービー最終便”に潜んでいるような気がします。前者はレッドヴェロシティ、後者にはレッドジェネシスが乗り込んできますが、クラシックはまだ始まったばかり。壮大な夢をターフいっぱいに描き上げてください。