大阪杯は誰も予想し得なかった展開と結果になりました。溜め息の出るようなレイパパレの美しくも鮮やかな戴冠に感嘆しながら、こんなことを考えました。「サラブレッドにライバルを認識する能力はあるのか?」と。今しがた見たばかりのコントレイルとグランアレグリアの凄絶なマクリ対決と同時に、脳裏をセピア色の再現フィルムが横切っていきます。コントレイルとグランアレグリアは、お互いにお互いをライバルとして認識していたのか?セピア色の登場馬たちもそうだったのか?他馬は眼中になく、なぜ2頭だけで競馬をしてしまったのか?

 

セピア色の思い出は77年秋の天皇賞ですから、もう40年以上も前のお話になります。天皇賞は当時まだ春秋ともに3200mでおこなわれ、現行の2000mに距離が変更されたのは86年です。一度勝つと出走できない“勝ち抜け制”が適用され、この年の春の王者テンポイントの姿は当然なく、人気はともに前走をレコード勝ちしたトウショウボーイ、グリーングラスに集まっていました。テンポイントと並び称され“TTG”の美称で一世を風靡したサラブレッドたちです。次走の有馬記念では“TTG揃い踏み”で4着の菊花賞馬プレストウコウを6馬身ちぎって圧巻の1-2-3を達成しています。人気も高かったが実力も抜きん出ており、まさに花も身もあるサラブレッドたちでした。

 

さて、話を77年の天皇賞(秋)に戻すと、稍重発表で先行有利の馬場状態となり、逃げ馬を追って好位馬群がひと塊で追い掛ける展開。向正面で痺れを切らしたトウショウボーイが先頭を奪うと、グリーングラスがそれに呼応して外から並び掛け、ビッシリ競り合いながらロングスパート合戦を繰り広げます。まさに大阪杯のコントレイルVSグランアレグリアの一騎打ちと二重写しになる瞬間でした。しかし直線に入ると両雄はさすがに失速。春の2着馬クラウンピラードが今回のモズベッロを思わせる末脚で突っ込み、更に最後方をポツンと追走していたホクトボーイが末脚を爆発させて突き抜けていきます。刺客グリーングラスは掲示板が精一杯の5着、天馬トウショウボーイは生涯で唯一馬券内を外す7着に沈みました。

 

グリーングラスは乗り難しい牝馬使いの達人でオークス4連覇の金字塔を打ち立てた嶋田功さん、トウショウボーイは魔術師とまで賞賛された武邦彦さんが手綱を執っていました。達人、名人を持ってしても、ファイトするサラブレッドは制御し切れないようです。大阪杯の福永祐一騎手、クリストフ・ルメール騎手にも同じことが言えるのかもしれません。競馬とは難しく分からないもの。だからこそ面白いのでしょうが。