モハメド殿下の兄であり、ともに傑出したオーナーブリーダーとして、偉大なホースマンとして、世界にもっとも大きく広範な影響力を及ぼしてきたハムダン殿下が、23日に亡くなられたそうです。アラブ首長国連邦(UAE)大統領は哀悼の意を表し、昨日24日から26日までの3日間、すべての政府機関を閉じて「服喪期間」とするそうです。今年のドバイワールドカップ・ナイトは、喪明けを告げる荘厳なセレモニーとして執りおこなわれます。それにふさわしく、殿下の志を受け継いで新たに歴史を塗り替えるようなヒーロー、ヒロインの出現を心待ちにしたいと思います。

 

さて、ご存じのようにワールドカップ・ナイトの枠順が確定しました。G1・ドバイゴールデンシャヒーンに出走するレッドルゼルは、14頭立ての13番枠を引き当てました。短距離レースで追い込み馬にこの枠は、常識的には厳しいハードルになるのですが、ファンの皆さんが指摘されているようにメイダン名物のキックバックの雨あられのような洗礼を避けるという意味では、距離ロスはあっても馬群の外目を追走できる有利なゲート順だとも考えられます。

 

17年と18年のゴールデンシャヒーンを連覇したアメリカ調教馬で、今は日本の社台スタリオンステーションに繋養されているマインドユアビスケッツは、直線一気の豪脚が強烈な印象を残す逆転劇のヒーローとして人気がありましたが、最初の年は14頭立ての大外14番枠に入りました。彼は一貫して馬群の外を回り、その距離ロスも影響して4コーナーではドンジリの位置。しかしそこから一気に全馬を差し切り、G1初勝利を飾ります。ジョエル・ロザリオ騎手の頭脳的にして戦略的なプレーが光りに光り輝きました。

 

その翌年は8頭立てと少頭数に恵まれましたが、チャド・サマー調教師が引いた枠順はナント最内1番枠!しかしジョエルは慌てず騒がず、スタート直後の直線で馬を外へ外へと導き、前年のような位置取りで勝ちパターンを再現しようと試みます。道中でのロスは前回以上に大きく、直線に向いて大外を回った関係でいったんはテレビ画面から消え、追っても追ってもまだ前に馬群がいる状態が続きます。やっと画面に飛び込んで来たのはゴール寸前。アタマだけ出たところで写真判定機のフラッシュがたかれました。1分10秒12はレコードでした。そんな馬もいました。そんなレースもありました。レッドルゼルがそんなレガシーの列に加わることができると嬉しいのですが。