「競馬は時計では測れない」と言われ、事実その通りの結果に
終わることが多いのですが、デビューしたてで経験の浅い2歳
馬が、競馬の根幹距離とされるマイル戦でこれまで1分33秒
台を切る走破時計で勝った馬は、これまでに3頭しかいません
でした。先週のデイリー杯2歳Sで1分32秒4をマークした
レッドベルオーブは、史上4頭目の記録です。
日本記録は2013年にミッキーアイルが京都の未勝利戦で叩き
出した1分32秒3。ベルオーブと同じくディープインパクトの
血を引く彼は、NHKマイルC、マイルチャンピオンシップとG1
勝利を重ね、種牡馬デビューした今年、重賞2連勝のメイケイ
エールをいきなり輩出。ダートでもヤマボウシ賞で1番人気の
レッドソルダードを7馬身ちぎって競馬をさせなかった大物デ
ュアリストを出すなど、持って生まれたあり余る豊かなスピー
ドをバックボーンとするポテンシャルの奥深さを印象付けてい
ます。次いで、昨年にサリオスとレシステンシアがマークした
1分32秒7が続きます。
特筆すべきは、32秒台に突入した全馬がG1勝利の金字塔を樹
立していることです。1分33秒0でサウジアラビアロイヤルC
を制したダノンプレミアム、阪神ジュベナイルフィリーズを勝
ったウオッカは1分33秒1と32秒台に到達できませんでした
が、後にダービーのテッペンを極め、七冠馬の栄誉を身にまと
いました。2歳時に芝のマイルで叩き出した1分32秒台は、G1
戴冠への天下御免の通行手形と言えそうです。
しかし、課題も幾つかありそう。道中でたびたび頭を上げて鞍
上のコントロールに大きく口を割る仕草で反抗姿勢を示して折
り合いの悪さを露呈したのは、先行きが心配でなりません。し
かし、直線に向いて馬群を割り、コーナーワークで先頭を奪う
と厳しく追われる立場に置かれながら、先を譲るところを見せ
ずアタマ差を凌ぎ切った勝負根性は、称賛に足ると感服しまし
た。クラシックディスタンスに延びても十分に戦えるはずです。