前回は、大馬主組織クールモアの専属ステーブルとして世界の
頂点を極める超名門エイダン・オブライエン厩舎をサンプルに
サラブレッド価値の象徴であるクラシックを勝ちまくるための
入厩馬フォーメーションを見て来ました。
260頭ほどの在厩馬のほぼ半分は2歳馬であり3歳馬は40%強と
全体の9割を軽く越え、4歳以上は1割に満たない少数派です。
これら競走馬はリスクヘッジのため、マイケル・テーバー氏、
デリック・スミス氏、ジョン・マグナー氏(夫人名義)などを
中心とする馬主グループで所有され、オブライエン師に一括で
預託されます。戦略を一貫させ、ぶらさないためです。

サラブレッドは3歳時には、ほぼ完成の域に達するよう、長い
歳月を経て創造された生きものであり、その本質は今も進化を
続けています。クラシックを勝つほどの馬は、微妙な世代差は
あっても古馬に混じって勝負できる可能性を持っているはず。
大ざっぱに言えば、そんな信念に基づいて3歳を戦力の中核に
据える、大胆にして緻密な戦略的厩舎運営が行われています。

こうした世界最先端のフォーメーションを仕組み的に実現して
いるのは、日本競馬が生み育てたクラブ法人かもしれません。
毎年一定の頭数の若駒が会員相互がリスクヘッジし合うことで
入厩し常に安定した世代ピラミッドが築き上げられています。
しかし課題がないわけではありません。日本は欧米に比較して
厩舎別・馬主別二重に厳格な馬房制限が課されており、一厩舎
あたりの管理頭数は馬房数の2.5倍まで、一馬主あたりにおける
入厩可能頭数は90頭が上限と規定されています。
在厩馬は直近のレース予定がある即戦力に限られ、それ以外の
馬は、外厩で調整を積まれることになります。

しかし、在厩と外厩のローテーションを、巧く回していくのは
至難の技。イギリスやアイルランド、フランスなど国境を自由
自在に行き来できる競馬先進国に対して、日本の中下級クラス
には、そうした選択肢がほぼ皆無ですから、出走機会の確保が
まずもって喫緊の課題になります。しかも中下級にとどまらず
「降級制度」廃止で、オープン馬が急増する傾向が顕著となり
出走機会を求めての地方競馬転出が目立つようになりました。  
今後は、地方競馬との交流をさらに活発化、出走機会の確保と
競馬全体の底上げを図ることが、重要になって行きそうです。

ご存じのように、競馬はあらゆるスポーツと同様に強いものが
生き残り、弱いものが退場させられる「優勝劣敗」のルールを
大原則として、勝ち残りを争う競技として発展して来ました。
JRAでは、昨年3452レースが行われましたが、そこに出走した
実頭数は1万1546頭、同着を除けば8000頭余りが勝利の歓喜を
味わう機会に恵まれせんでした。実際には2勝以上を上げる馬も
珍しくなく、「負け組」の総数はさらに増える勘定になります。
想像以上に厳しい現実が、競馬場には横たわっているようです。

3歳までに勝ち上がれるかどうかが生き残りのボーダーライン!
そこを勝ち抜いて来た3歳馬が「降級制度」廃止で台頭するのも
自然の流れと考えることもできます。
ただ無事に関門を突破すれば、賞金の高い日本競馬の優位性を
生かすことで、健康であれば高齢まで息長く活躍できる下地も
あります。クラシック世代を中核とするピラミッド構築による
3歳馬優位の世界的潮流に遅れを取らず、古馬になっても息長く
サラブレッドが頑張れる環境づくりが求められています。