キタサンブラックが、史上34頭目の顕彰馬に選出されました。
競走馬として最高の栄誉「競馬の殿堂」入りが実現されます。
「競馬の殿堂」は200人近い競馬記者など専門家の投票により
その4分の3以上の得票率を得ることで、選出が決定されます。
様々な価値観をお持ちの専門家の方々から、それだけの支持を
集めるのは相当に高いハードルです。
それを候補2年目にして軽々とクリアしたキタサンブラックは、
サラブレッドとしてG1七冠と最高クラスの傑出した実績を誇り
中でもオーナーの北島三郎さんも含めて競馬人気の盛り上げに
一役も二役も尽くした功績は、文句なしに立派なものでした。

残念だったのは、投票3位のスペシャルウィークでした。今回も
無念にも落選しました。思えば、彼は現役時から今に至るまで
20年以上も「競馬の殿堂」の高いハードルと戦って来ました。
そもそもの発端は、世紀末1999年の年度代表馬争いでしたね。
武豊騎手にダービージョッキーの称号を初めてプレゼントした
彼は年が明けてさらに充実、天皇賞春秋連覇、ジャパンCでは
当時の世界最強馬モンジューを一蹴、4着に沈める圧勝でした。

しかし同世代には、恐るべきライバルが牙を砥いでいました。
グラスワンダーは宝塚記念と有馬記念で彼を撃破しています。
フランスに渡ったエルコンドルパサーはサンクルー大賞を勝ち
凱旋門賞ではモンジューと一騎打ちの末に、日本調教馬として
歴代最高着順の2着に食い下がり、ロンシャンの地に日の丸を
堂々と旗めかせました。さぁ、本当に強いのはどの馬なのか?
これで年度代表馬の行方は混沌として、分からなくなります。

長い議論と繰り返しの投票の末に、年度代表馬にはエルコンを
選出、選に漏れたスペシャルとグラスに特別賞が贈られます。
ところがスペシャルの白井寿昭師は、大不満だったようです。
「二度負けているグラスなら諦めもつく。しかしモンジューに
負けた馬が勝ったスペシャルより上というのは納得できない。
凱旋門賞がジャパンCより格上と自ら認めたようなもの」と。
ジャーナリストとして普遍性を求める思考とホースマンゆえの
情熱と誇りとの落差が生んだ、スレ違いだったのでしょうか?

しかし同世代三強の戦いは引退後の「殿堂」入りに持ち越され
常に票を分け合う結果となり、どの馬もハードルを超えられぬ
痛み分けの状態が長く続くことになります。
しかし、一見は不毛なそれが永遠に続くわけではありません。
顕彰馬の選考対象は、登録抹消1年後から20年間とされており、
スペシャルウィークは残念にも今年がラストチャンスでした。
いずれ日本ダービー100回記念とかメモリアルイヤーに際して
何らかの救済措置が発動されることを待ち望みたいのですが。

でも今となってみればエルコンドルパサーもグラスワンダーも
そしてスペシャルウィークも、しなやかで強靭な馬であったし
この異なる個性たちが同世代に生まれ互いに競い合ったことが
奇跡の時間だったようにも思えます。彼らを忘れないファンが
いる限り、そこが彼らの「競馬の殿堂」となるはずですから。