20年代最初のダービー馬コントレイルのサラブレッドとしての
完成度の高さには、正直なところ驚かされました。
この日のために生まれて来て、その大目標通りに馬体と精神が
一分の隙もなく仕上がる能力は、アメリカ二冠馬に輝いた祖父
サンデーサイレンス、無敗の三冠馬父ディープインパクトから
伝えられた「クラシック血統」の真髄と感動させられました。

手綱を執った福永祐一騎手によれば、他馬を追い抜いた後には
集中力を抜いて「遊びながら走っていた」そうですが、これも
現時点では唯一の欠点というより、不要不急の力を制御できる
「賢さ」ゆえなのでしょうか?持って生まれた天賦の才です。
完成度の究極の高みへと昇り詰めてくれる秋が、楽しみです。

コントレイルの強さは歴史的と言えるほど際立っていましたが
「チーム・ノースヒルズ」の統率のとれた編隊走法もキラリと
光っていました。逃げ馬を牽制する2番手をシッカリと確保した
コルテジアがペースを巧みにコントロールし、3番手に収まった
大本命コントレイルの外をガードするようにディープボンドが
併走、直線に向くまで一糸乱れぬチームプレーを演じました。
松山弘平騎手、和田竜二騎手は最高の仕事をしてくれました。
見事なものです。舌を巻かされる思いでした。
これなら、海外のビッグレースでも互角以上に戦えそうです。
走破タイムが2分24秒1と想定外に遅かったのは、前半のスロー
ペースと乱調子な展開を避けたチームプレーの影響でしょう。
今回は、時計がそのまま能力、ではなかったように思います。

ディープインパクトは、ここまで10世代で6頭のダービー馬を
送り出したことになります。史上3頭目の金字塔です。
「戦前のサンデーサイレンス」と呼ばれる名馬トウルヌソルは
第1回ダービーの勝者ワカタカから11戦11勝の名牝クリフジまで
6頭のダービー馬を輩出し、今では第1回が行われた聖地・目黒
競馬場跡地に銅像の姿となり記念すべき栄光を伝えています。

サンデーサイレンスは「戦前の」とか「地方の」「砂の」など
傑出馬が出現するたびに「冠尊称」として頻繁に使われますが
彼が「偉大さ」の歴史的標準として崇められているからです。
そのサンデーも初年度産駒タヤスツヨシから最晩年の最高傑作
ディープインパクトまで、6頭のダービー馬を生み出しました。
トウルヌソルともども、数だけではなく歴史を創り上げて来た
名馬がズラリと居並び、非常に価値の高い記録だと思います。
10年後、次の「ディケイド」30年代初頭には、順調であれば、
コントレイルの産駒たちがターフを駆け回っているはずです。
この中から、歴史を創る名馬誕生への期待が膨らみます。