ヨーロッパ競馬の根底に流れる思考法には、天高く舞う大鳥の
視座から物事を俯瞰することで、目先だけに捉われず普遍的な
正統性を獲得するために、千年単位(ミレニアム)に始まって
百年(センチュリー)といった気の遠くなる長期的なスパンや
10年毎を一区切りとする「ディケイド」と呼ばれる中期単位で
様々な事象を整理、総括する伝統が根づいています。

時代を代表する名馬を選び出すのも一般的に「ディケイド」の
単位が用いられているようです。残された成績表だけを見ても
レース内容を加味したとしても、その年によりレベルに格差が
存在するのは避けられません。一定の期間を俯瞰して見るのは
長い歴史を持つ、ヨーロッパならではの英知なのでしょう。
例えば1970年代なら50年後の現在まで「最期の三冠馬」として
偉名を残すニジンスキー、80年代はダンシングブレーヴによる
凱旋門賞の驚異の追い込みといった具合に名馬が居並びます。
直近の10年間では、無敗馬フランケルで文句なしでしょうね。

日本ダービーを「ディケイド」の視座で眺めると、この10年は
「ディープインパクトの時代」と記憶されることになります。
ちょうど10年前に産駒が初めて競馬場に姿を現すと、翌々年に
2世代目のディープブリランテがダービー制覇劇の堰を切ると、
以後もキズナ、マカヒキ、ワグネリアン、ロジャーバローズと
出走機会9年間で5頭が、世代の頂点に君臨して来ました。
偉大な父サンデーサイレンスが、累計12世代で6勝と規格外の
記録を残しましたが、この金字塔に追い付き追い越す可能性を
持つのはサンデー最高の後継馬ディープインパクトだけです。

しかし、よく言われることなのですが、ディープはこれまでに
ダービー馬5頭、皐月賞馬と菊花賞馬はそれぞれ3頭を輩出して
断然のクラシック適性を誇っていますが、自身の三冠はおろか
二冠馬すら未だ出していません。七不思議の一つでしょうか?
でも、孝行息子というものは現れるものです。ご存じのように
今年はコントレイルが初の二冠馬誕生に王手をかけています。

海外のブックメーカーも1.5倍前後の絶対的人気に支持しており
日本でも発売が始まれば、1倍台を越えることはなさそうです。
人気が走るわけじゃありませんが、世界中のホースマンたちが
コントレイルの走りに熱い視線を注いでいるのは確かなよう!
「ディープインパクトの10年間」だった10年代から20年代へと
新しい「ディケイド」へ移行する今年、次の10年間の競馬場に
どんな新風景が立ち現れるのか?楽しみが大きく膨らみます。