中京競馬場のG1チャンピオンズCは、有力馬たちがそれぞれに ありったけ持ち味を出し切る素晴らしいレースになりました。 逃げたインティは単調なスピード馬のイメージが強い馬ですが この日は武豊騎手との呼吸もピッタリで36秒6-36秒2-35秒7と 加速ラップで早からず遅からず後続になし崩しに脚を使わせる ベテランらしい巧騎乗は、好位の内に控えてロスなく追走した クリソベリルも交わすに手古摺り逃げ切りまで思わせました。 ところが、ゴールの50mほど手前にドラマが待っていました。 ベリルの直後に位置していたルメール騎乗ゴールドドリームが 外から並びかけようと馬体を併せに来た刹那の出来事でした。 闘争心に火がついたベリルが天下の名刀の斬れと言うしかない 凄まじい瞬発力を繰り出し、一瞬で2頭の間を断ち割りました。 クビ差出たところがゴールでは、歴戦の勇者も差し返す暇すら ありません。究極の底力勝負を見事に制した若武者・ベリルの 凛々しくも圧巻の快勝劇でした。 競馬に「タラレバ」はありません。 しかしドリームが馬体を併せ競り合う強襲に行かなかったら? が、ルメール騎手にベリルの炎のような闘争心は想像を超える ものだったのでしょう。それも競馬ですから仕方ありません。 もう一つのタラ、ご存じのように古馬と3歳馬の負担重量差は 毎月変化していきます。分かりやすいのでG1戦を例にとれば、 最初の混合戦・安田記念の6月時点では4キロ差の決まりです。 それが9月のスプリンターズSは2キロ差に縮まり、12月からは 1キロ差とほぼ互角の条件に設定されています。 ところが今回のチャンピオンズCは、土日が一括りの「節」が 11月と12月にまたがるため、11月の規定が採用されています。 ドリームやインティの57キロに対し、ベリルは56キロではなく 55キロで走れた訳です。1日違いで1キロの恩恵に浴しました。 この1キロが、ゴール前の厳しい競り合いで生きたのかどうか? 神のみぞ知る神秘の領域と言うしかありませんが、それも含め 競馬の奥深い醍醐味を堪能させてくれた史上まれに見る今年の 超ハイレベルなチャンピオンズCでした。