風はドイツから吹く

近年の世界のビッグレースでは“ドイツ縁(ゆかり)”のサラブレッドが激走するシーンがやけに目立ちます。凱旋門賞を例に取ると、2011年にデインドリームがドイツ生産馬として初めて勝利を飾ったのを皮切りに、イギリス生産・フランス調教馬ですが母系がゴリゴリのドイツ血統のヴァルトガイストがエネイブルの3連覇を阻み、1年を挟んでドイツ血統・ドイツ生産・調教の“純正ドイツ・ブランド”トルカッタータッソが大穴を開け、今年のアルピニスタはご存じのように“ドイツ武者修行”でG1を3連勝してスターダムを駆け上がったシンデレラホースです。“ドイツ武者修行”と言えば、先週のブリーダーズCターフのレベルズロマンスはベルリン大賞、オイロパ賞とドイツG1を連勝して挑んだ大舞台で金星をもぎ取っています。

ドイツの番組体系は、“2400m偏重”と言って良いほど、こだわり抜いています。G1レースはダービーとオークスに加えて、古馬混合の5レースが組まれていますが、ダルマイヤー大賞2000mを除けば、すべてが2400mという偏りぶり、言葉を換えれば“2400m天国”です。競馬の母国イギリスを先頭に、レース価値の最高峰カテゴリー「チャンピオン・ディスタンス」の主流が、かつての2400mから2000mへと移行し始めて随分と歴史を重ねてきましたが、世界の競馬先進国でドイツ一国だけが、時代の流れに逆行するように“2400m至上主義”を頑固なまでに貫いています。ですから“2400m仕様”の馬が増えていくのも自然な流れでしょうし、“2400m得意”の馬がドンドン国境を越えて遠征してくるのも当然の成り行きです。

この“頑固一徹さ”は、どこからくるのでしょうか?背景として考えられるのは、ひとつには生産頭数の少なさです。ドイツは年間1200頭程度と伝えられますから、日本の約8000頭に比べれば15%にしかなりません。アイルランドやフランスなどの生産大国からの輸入馬も少なくないのでしょうが、距離の選択肢を広げて多様性を追求するには、いかにも駒不足が否めません。広げれば広げるほどレベルの低下が避けられないでしょう。少ない頭数でも世界と互角に戦えるレベルを維持するには、これと思い定めたカテゴリーに絞って、生産から調教・レースと集中的に資源を投下するしかなかったのでしょう。あとはブレないで頑固にその道を貫くのみです。

世界を颯爽と吹き抜けているドイツの風が、この秋は日本にも吹き寄せてくるようです。今週のエリザベス女王杯に出走するマジカルラグーンは、兄ノヴェリストと同様にアイルランド生まれですが、母ナイトラグーンは筋金入りのドイツ牝系馬。父ガリレオの母アーバンシーもドイツ牝系の出ですから、この馬には4分の3に達するドイツ血統が流れていることになります。ノヴェリストも先週のアルゼンチン共和国杯で久々に重賞勝ち馬を輩出して、勢いの追い風を送ってきました。頑張ってくれそうです。さらに秋の大一番ジャパンCには、凱旋門賞馬アルピニスタがまだ出走の可能性を残しています。また、こちらも出走確定していませんが、テュネスというドイツ調教馬も登録しています。先週末、ミュンヘン競馬場のG1・バイエルン大賞(2400m)で10馬身差をつけて逃げ切りを演じたばかりの3歳馬で、半兄にトルカッタータッソがいる旬の良血馬です。追い込み一本槍の兄とは真逆のタイプで、レース映像を見る限り、結構スピードもありそうです。ドイツ生産・調教馬のジャパンC制覇は27年前の1995年にランドが、唸るような末脚で三冠馬ナリタブライアンを馬群に沈めて成し遂げていますが、果たして“ドイツ旋風”が再現されるのでしょうか。
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