至宝シラユキヒメ一族【前】

晴れ上がった初夏の東京競馬場、G1ヴィクトリアマイルの直線を他の17頭全部引き連れた純白のサラブレッドが、神々しくも美しい馬体を躍らせて先頭で駆け抜けて来ました。その名はソダシ。父クロフネ・母ブチコ・祖母シラユキヒメという血統の牝馬です。前日のG2京王杯スプリングCでは、父ミッキーアイル・母シロインジャー・祖母ユキチャンから曽祖母シラユキヒメへ至る血筋のメイケイエールが、栄光と挫折を綾なす中で重賞5勝目を掴み取り、歓喜の雄叫びを上げました。日本競馬が世界に誇る白毛ファミリーが、日本競馬の至宝として尊ばれ敬われる日が遂にやって来た瞬間でした。

世界遺産や国宝級の文化財にも匹敵する“至宝一族”の牝祖シラユキヒメは、青鹿毛のサンデーサイレンスと鹿毛のウェイブウインドウを配合されて、今から26年前の1996年4月4日にノーザンファームで世にも珍しい“白毛”の馬体に包まれて生まれました。ディープインパクト、キングカメハメハ、クロフネと日本競馬の歴史を書き換えたオーナーブリーダー金子真人さんが所有しますが、このことがこの稀有な一族にとっても日本競馬にとっても、とても幸せなことだったような気がします。それはさておき、“白”の秘密を探り当てようとしても父母はもちろん、3代まで遡ってシラミ潰しに当たっても白毛はおろか芦毛も出て来ません。4代目にも目ぼしい存在は見当たらず、ようやく5代目に“芦毛のダービー馬”マームードの名前が見える程度です。

マームードは、競走馬としても非凡でしたが、種牡馬としてはそれ以上の働きをしています。名牝アルマームードの父として競馬史に足跡を刻み、孫娘ナタルマはノーザンダンサーの母となり、同じくコスマーはヘイローの母としてサンデーサイレンスへと遺伝子を伝える役割を果たします。現代世界競馬の根幹を創造した偉大な血統。近代から現代へと舞台が暗転する交差点のような存在と言えそうです。しかし実際のところ、白毛の遺伝子はどこから来て・どう繋がれて来たのかは、遂に明らかにされることはなく、シラユキヒメの毛色は「突然変異」と判定されます。ここからは「メンデルの法則」に則って50%の確率で白毛が出現していくのですが、シラユキヒメの遺伝力は確率を遥かに越えて「白毛軍団」を増殖させます。

一族の増殖スピードが加速度的に上がっても、金子オーナーは白毛に出た馬は原則的に自己所有としますが、それ以外の毛色はセレクトセールなどを通じて“養子に出す”ケースも目立って来ました。その代表格がメイケイエールであり、縁があって東サラの勝負服を鞍上に迎えているルージュエクレールだったりします。もう10年もしたら、シラユキヒメ伝来の気高くも美しい純白のサラブレッドたちが、世界のあちこちで見られるようになるでしょう。それを逆説的に言えば、シラユキヒメの子孫たちは走る、走るからますます優秀な血を配合され、さらにレベルの高みを極める、そんな大河ドラマのような発展性を内に整えていることになります。
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