怪物降臨

フルゲート20頭の21番目という補欠馬が、真っ先にゴールに飛び込んだケンタッキーダービーの結末は、生涯22戦21勝の“芦毛の怪物”ネイティヴダンサーが唯一敗れた1953年ケンタッキーダービーの“アンビリーバボー(信じられない)”な衝撃以来ということになりそうです。3着馬を大きく5馬身ちぎってマッチレースを演じた末にクビだけ競り勝ったのは話が出来過ぎですが、ダークスター(ダークホース=穴馬の星)という意味深な馬名を冠せられていました。怪物ネイティヴダンサーはミスタープロスペクターの祖父であり、またノーザンダンサーの母の父として、今も絶大な影響力を持ち続ける偉大な存在です。2022年の波乱の立役者リッチストライクには、ミスタープロスペクターとサーチフォーゴールドの全兄弟クロスを抱えているうえに、ノーザンダンサーに遡る血脈にも流れている“芦毛の怪物”の集大成のような血統構成。これも歴史の悪戯(いたずら)という名のちょっとした偶然なのでしょうか?

この“チャーチルダウンズ・ショック”の余波ということでもないでしょうが、ヨーロッパのクラシック戦線も混戦ムードが色濃く立ち込めてきました。2000ギニーでワンツーを決めたゴドルフィンのコロイバスとネイチャートレイルが、距離不安からダービーを回避。ライバルのクールモアが所有するルクセンブルクが本命に押し出されましたが、これも脚部不安で出走回避と状況は混沌を極めています。こうした中でエリザベス女王即位70周年の“プラチナイヤー”にあやかって、リーチフォーザムーンという女王の愛馬がダービーの有力候補に期待されましたが、仕上がりが間に合わずダービーを断念、混沌に拍車をかけます。各地で行われるトライアルから毎日のようにニューフェイスが登場していますが、天下統一を果たせる大器出現とは、なかなかいきません。

トライアルシリーズのオオトリは、ヨーク競馬場で現在開催中のダンテフェスティバルが努めます。その初日におこなわれたオークストライアルのG3・ムシドラSで混戦ムードを一掃する大物が出現しました。昨年、ディープインパクト産駒のスノーフォールがこのレースを皮切りに、英オークス16馬身、愛オークス8馬身半、ヨークシャーオークス4馬身と圧勝トリプルを実現した出世レースです。鮮明な記憶に残るこの“スノーフォール伝説”に新章を書き加えたのは、ジョン・ゴスデン師が送り込んだエミリーアップジョンというシーザスターズ産駒でした。1000mも続くヨークの直線で抜け出すと、独走劇の末に最後は軽く流して5馬身ちぎる圧勝劇を演じます。手綱を執ったランフランコ・デットーリは「エネイブルと同じだ!」と興奮を隠せません。同じゴスデン=デットーリコンビで同じヨーク競馬場のヨークシャーオークスを同じく5馬身差で楽勝した愛馬エネイブルを思い出したようです。彼女は次走で凱旋門賞も制覇しています。

名手デットーリは、エミリーアップジョンがエネイブル同様にオークスも凱旋門賞も勝つと予言しているのです。エネイブルを超えるとしたら、凱旋門賞3連覇の金字塔しかないのですが、それすら成し遂げるパフォーマンスの持ち主だと確信しているのかもしれません。ブックメーカー各社は“スノーフォール伝説”再現の結果を受けて、彼女をオークスの大本命に抜擢しています。一方のダービー戦線は、依然として混沌のまま。今夜ゲートが開くダンテフェスティバルの超目玉であるG2・ダンテSの結果次第ということになりそうです。オークス戦線のように突如として“怪物降臨”のドラマが繰り広げられるのか?あるいはチャーチルダウンズのように底のない混迷が続くのか?いずれにしろ、クラシックもいよいよクライマックスへと突入していきます。
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