一病息災

ゴールデンウィークが終わり、今年も夏祭りのシーズンがやって来ました。昨今のコロナ禍の影響もあって季節感は薄れていますが、祭りに欠かせない寺社参りには家族揃っての平穏な幸せを祈り、無事で健康に長生きできるようにと「無病息災」を願ったりします。しかし世の中では「一病息災」という言葉もしばしば使われます。持病に悩まされる人は健康の大切さを身に沁みて実感しており、健康に人一倍の気を配るから、かえって長生きするという言い伝えです。サラブレッドにも、それが当てはまるケースは珍しくありません。昨日のG3新潟大賞典をトップハンデもなんのその、元気いっぱいに重賞2勝目を飾ったレッドガランも、そういったタイプかもしれません。

ガランは3歳4月と既に新馬戦もなくなった時期の未勝利戦に、やっとデビューに漕ぎ着けた遅咲きの馬です。経験豊富な既走馬を相手に走る厳しい条件が待ち構えていましたが、“一戦入魂の気迫”で直線一気に鮮やかな差し切り勝ちを飾ります。もし取りこぼしていたら、未勝利戦の期限も数ヶ月後に迫っており、JRAでの生き残りをかけた無理を承知の使いづめローテーションも避けられなかったでしょう。そうなれば、ガランの現在の勇姿が見られなかった可能性も大だったでしょうね。一方では体質の脆弱(よわさ)と相談しながら繊細に、他方でいきなり勝負になるよう大胆に仕上げていただいた安田隆行調教師、スタッフの皆さん、またレースでは後方の馬込みに置かれても落ち着いて馬とコンタクトし、上がり33秒6の末脚を引き出した池添謙一騎手、すべての関係者に感謝せねばなりません。

この1勝でガランは、常に馬の体調や気分とジックリ相談しながら、丁寧に使われるようになります。加えて暑さに弱く、夏場は全休して来た馬で、実働期間は年の半分あるかないか?こんな贅沢きわまりないローテーションで成長をひとつひとつ我が身として、会員の皆さんすら驚かせた明け7歳にしての“大覚醒”を迎えることができました。育成や調教技術の急速な進歩と向上という背景も大きいのですが、たとえば障害馬のタフネスぶりも特筆ものです。そもそも筋肉に使い方も本質的に違うでしょうし、出世するほど使われるレースが絞られ、一流馬は多くても年間せいぜい4〜5戦が実情です。そこへ至る道もレッドガランがそうだったように、比較的ゆっくりデビューし、ゆったり使われる馬が多い気がします。中山大障害、中山グランドジャンプの二大レースを8勝している障害王オジュウチョウサンは、2歳デビューと順調なスタートを切ったのですが、早々に2戦だけで切り上げ、1年間の長期休養に入り徹底的に立て直されて、復帰したときはジャンパーに転進していました。

一見、無駄なように思える若年時の過ごし方が、馬の成長と大きく深い関係があるのかもしれません。障害の本場イギリスやアイルランドで無敗の16戦16勝と破竹の進撃を続けるスーパーヒロイン・ハニーサックルという8歳牝馬も、デビューは4歳秋でした。彼女の鞍上レイチェル・ブラックモアさんはグランドナショナルを戴冠した凄腕ジョッキーで、この“レディースコンビ”は、国境を越えた国民的英雄として人気が沸騰しています。しかし強ければ強いほど、勝てば勝つほど大変になって行くのは、勝負の世界の常です。ガランも現状でも既にトップハンデを背負わされるほど、その実力は広く公的に認知されています。相手もどんどん強くなるG2、G1レースは並み大抵の“幸運”で乗り切れるものではありません。一病息災、コツコツと無事を積み上げつつ、これまでガランがそうしてきたように、それを少しずつ地力に変えてくれるのを祈りたいと思います。
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