アメリカ競馬を牽引し、西海岸地区を代表するサンタアニタ競馬場とデルマー競馬場が、サンタアニタハンデ、ハリウッドゴールドカップS、パシフィッククラシックS(いずれもダート2000m)の3戦をコンプリート制覇した馬に対して100万ドルのボーナス賞金を贈ることが決定されたそうです。アメリカ競馬全体が昨年来のコロナ禍で賞金額も軒並み半減レベルの減額となり、有力馬の多くは超高額賞金を準備したサウジカップ、ドバイワールドカップなど海外の大規模カーニバルに関心を深めるようになっています。ボーナスレースにピックアップされた一級のG1レースでも、1着賞金は日本円で3000万円程度。新設されるボーナス制度にはその補填の意味合いもあり、有力馬の参戦モチベーションを高める狙いがあるのでしょうが、3戦すべての勝利が条件とハードルは低くありません。

 

とはいえ、コンプリート制覇は前例が皆無というわけではなく、13年のゲームオンデュードと18年のアクセラレートが達成しています。ダート2000mといえば1着賞金3億円を超えるブリーダーズカップクラシックと同条件ですから、アクセラレートが実現しているように、アメリカンドリームの最至近距離に位置することをも意味します。単に100万ドルの臨時収入で終わるという話ではありません。ブリーダーズカップ王者ともなれば、種牡馬としての魅力的なトレードマネーや年々積み上げられていく種付料収入も破格のものに跳ね上がりますから、全体として夢のあるストーリーになっているのは確かなようです。

 

主催者である競馬場やジョッキークラブの権限が強くて裁量範囲も広い海外において、ボーナス賞金制度はしばしばお目にかかるシステムです。最近ではイギリスを舞台に、長期的な低落傾向が続いていた2700mを超えるマラソンレースの振興を目的に「ステイヤーズ・ミリオン」と銘打ってボーナス賞金100万ポンド≒1億4500万円が、ロイヤルアスコットで開催される距離4000mの大人気番組ゴールドカップ、昇格したグッドウッドカップと2つのG1を含む4つのレースを完全制覇したチャンピオンに贈られます。低いとは思えないハードルですが、2400m級の絶対女王エネイブルと同じジョン・ゴスデン調教師が管理するストラディヴァリウスという馬が2年連続して100万ポンドのボーナスをゲット。ゴールドカップは3連覇、グッドウッドカップは4連勝中と無敵街道をひた走っている、マラソンカテゴリーの絶対王者です。競馬の魅力をさらに高めることと、ビジネスとして大きな成功をもたらすことを両立させているのが、ボーナス制度の何とも味な魅力になっています。

 

日本では海外のように派手に宣伝したりしませんが、大きなところでは3歳馬を対象に皐月賞、日本ダービー、菊花賞の三冠達成で1億円、古馬は大阪杯、天皇賞(春)、宝塚記念の春三冠、また天皇賞(秋)、ジャパンC、有馬記念の秋三冠のコンプリート制覇に対してそれぞれ2億円の褒賞金という名のボーナスが贈られています。細やかな配慮としては、夏のサマースプリントシリーズなど地方開催を盛り上げる施策も嬉しいですね。多様なスタイルのボーナス賞金制度の拡充を、各方面からスポンサーを募ることも含めて、もっと盛り上げてもらいたいし、そのためにはドンドン宣伝するのも悪くないと思います。