今年最初の交流G1・川崎記念を船橋所属の地方調教馬カジノフォンテンが快勝しました。カジノドライヴにとっては自身、産駒を含めてG1は初勝利となります。おめでとうございます。諦めかけていた頃の朗報で嬉しさも格別、喜びもひとしおです。

 

ドライヴと言えば、京都ダ1800mで武豊騎手を鞍上に迎えたデビュー戦が強烈なインパクトを残しています。サッと先手を奪うとほとんど馬なりで逃げて、上がりの3ハロンは追われるところなく13秒1-12秒2-11秒9と圧倒的な加速ラップを刻みます。地の涯まで駆けても追いつける馬はいないでしょう。結局、ゴールでは時計にして2秒3、着差にすると推定15馬身以上はあろうかという記録的な大差がついていました。誰もが天性のスピードランナー降臨と驚嘆せざるを得ない内容でした。2戦目に選ばれたのは、アメリカはニューヨークのベルモントパーク競馬場、G2・ピーターパンSでした。兄ジャジル、姉ラグズトゥリッチズが米三冠最終戦であるG1・ベルモントSを連覇しており、三兄弟制覇はドライヴにとって宿命づけられていたからです。

 

ここでもドライヴは天賦の才とも言うべき突出したレースセンスを見せて、2着馬に5馬身と4分の3馬身の差をつけて悠々とゴールインします。日本調教馬としては本場アメリカのダート重賞は歴史的な初勝利でした。ベルモントSは、不運にもレース直前の挫石で大事をとって出走取消。アメリカ国民こぞって、さらに日本の競馬ファンの大きな夢は潰えましたが、持って生まれたスピードと完成度の高さを備えたドライヴの競走馬としての、そして種牡馬としての果てしない可能性を疑うものはいませんでした。世界中でただ一人、藤澤和雄調教師だけが「本当に良くなるのは秋以降。サラブレッドとして完成するのはその先だ」と言い続けていましたが。

 

藤澤先生の「予言」は、幸か不幸か見事に的中しました。ドライヴは大きな故障もあって競走馬としては期待に存分に応えたとは言い難く、種牡馬入り後もスピードと完成度の高さを期待されて初年度から200頭の牝馬を集めますが、期待を裏切る場面が少なくありませんでした。しかし藤澤先生の「予言」はここでも的中します。恐るべき慧眼でした。歳を追うに連れてドライヴの種牡馬成績は右肩上がりの傾向を示すようになります。産駒は概ね晩成の気風が強く、初年度産駒のヴェンジェンスは6歳秋のG3・みやこSでドライヴにJRA重賞初勝利をもたらします。ヴェンジェンスは7歳を迎えてもG2・東海S、G3・平安Sをともに2着するなど元気一杯です。8歳の今年も現役を続行、切れ味鋭い末脚は穴党の熱い支持を得ています。

 

「晩成の大器」という二つ名がカジノフォンテンほど似合う馬も珍しいでしょう。4歳暮れにG1・東京大賞典でクビ差2着という世紀の大銀星を降らせて、先日の交流G1・川崎記念ではフロックどころか、同じオメガパフュームを相手に逆に3馬身ちぎる劇的な金星を頭上に掲げました。ドライヴ産駒の諸先輩と比べて本格化がやや早めで、残された時間を考えると果たしてどこまで行ってくれるのだろう!と期待ばかりが膨らみます。ドライヴは不幸にも、ディープインパクトやキングカメハメハと前後するように天に召されましたが、遺された産駒たちの本領発揮はこれからかもしれません。