クロフネが亡くなりました。老衰ということですが、23歳でしたから大往生でしょう。立派な生涯でした。心からお悔やみ申し上げ、ご冥福をお祈りいたします。

 

クラシックが外国産馬にも開放され、国際化元年となった年に華々しい働きをしてくれた馬でした。鎖国日本に事実上の開国を迫ったペリー提督の黒船にちなんで命名され、立ち位置としては日本馬の前に立ち塞がる厚い壁、いわば仇役でしたが、馬主さんなど多くのホースマンに可愛がられた人気の高い馬でした。

 

しかし、同期も強豪揃いで意地を見せました。2戦連続でレコード勝ちを記録して楽勝と思われたG3・ラジオたんぱ杯3歳S(現G1・ホープフルS)ではアグネスタキオンが素質全開で逆にレコード勝ち、2着もジャングルポケットが末脚を伸ばし、クロフネは3着に敗れます。タキオンの僚馬アグネスゴールドはブラジルに渡り、先日もウルグアイでG1馬を出すなど南米各地に優良馬を送り込んでいます。極めてハイレベルな世代でした。

 

そのレベルの高さを改めて実感させたのは、3歳秋のG3・武蔵野Sです。ダート1600mで走破タイムが1分33秒3、春のG1・NHKマイルCで自身の勝ち時計が1分33秒0でしたから、G1馬イーグルカフェが9馬身ぶっちぎられたのも納得がいきます。次走のG1・ジャパンCダートもレコードで7馬身差の圧勝でした。「あぁ!世界のレベルとはこういうものなんだ」と痛感させられたのを覚えています。まるで次元が違いましたね。

 

しかし、クロフネは強いばかりではありませんでした。とりわけ種牡馬デビューとともにキャラクターの幅を広げ、捕鯨調査を名目とした来航背景を綴る「ホエールキャプチャ」、たった四杯で夜も眠れずと江戸市民のパニックを伝える川柳にかけた「スリープレスナイト」など複数の馬主さんによる独創的な馬名が登場して、クロフネのサイドストーリーを豊かなものに膨らませ、競馬に文化の薫りを漂わせてくれたものです。

 

ソダシという国宝級のヒロインを生み出してくれたのも感謝しかありません。この白毛一族には関東オークスなど交流重賞で活躍したユキチャン、今週のG2・東海Sに登録のあるハヤヤッコの母マシュマロなど、クロフネ産駒が少なからず存在感を放っています。競馬をさらに豊かものとして楽しませてくれることでしょう。