3日間開催の最終日、G3・フェアリーSはキズナ産駒のファインルージュが中山名物の胸突き上がりの急坂で力強く弾け、2馬身半突き抜けて快勝。1分34秒4と走破時計は地味でしたが、ラストは12秒0-11秒9-11秒8と尻上がりの加速ラップで、距離延びても味がありそうです。1200mの新馬戦から始動して、1400m、1600mと1ハロン刻みに新境地を切り開いてきた奥深いポテンシャルは、桜花賞は言うまでもなくオークスまで視野に収めて楽しみが止まりません。

 

しかしキズナが、種牡馬としてここまで鮮やかなスタートダッシュを決めるとは、実は想像もしていませんでした。王道サイアーとしては、少なからず異色な存在に思えたからです。キズナが異色と言うのは、もともとノースヒルズのオーナーブリーダー馬であり、ノーザン・社台グループの世界一を誇る繁殖牝馬資源を背景としたエリートたちとは、牝馬質においてスタート時点から致命的とも思われる格差に甘んじねばならない点でしょうか。

 

キズナは、ここまで2世代にわたる延べ7頭が交流を含む重賞レースで合計9勝を挙げています。近年ではロードカナロアに匹敵する好発進と言える立派な実績です。八冠馬アーモンドアイのようにG1を勝ちまくる派手さはないものの、芝、ダート、距離の長短を問わない万能性はどこへ出しても恥じるところがありません。しかしこの実績がどのような背景から生まれて来たのか?延べ7頭の生産牧場別の内訳を眺めると、出身母体のノースヒルズが3頭を出して気を吐き、日高の中小牧場も同じく3頭を輩出しています。言葉は悪いですが、多少ともマイナー感が付きまといます。

 

これに対して天下のノーザンファームは、ファインルージュが最初の重賞勝ち馬にようやく名を連ねました。しかも輝くばかりの名牝ラインナップを誇るノーザンファームにあっては、失礼ながら一流牝系とは呼びにくい存在であり、牧場の配合スタッフはサンデーサイレンス3×4のクロスを忍ばせることでセールスポイントを創り出しています。さすがに有能な生産ビジネスマンらしくソツがありませんが、こうした一歩引いた扱いは、キズナの後に控える三冠馬コントレイルも基本的には同じでしょう。自身は無論のこと、後輩コントレイルの分まで新しい運命を切り開くチャレンジに挑まねばなりません。

 

今年、キズナの種付料は1000万円に値上げされました。新王者ロードカナロアの1500万円に続き、エピファネイア、ドゥラメンテと並ぶスリートップを形成しています。まだG1に手が届いていないキズナですが、今季こそは金メダルの山を築いてくれないでしょうか。