ディープインパクト、キングカメハメハの両巨頭が世を去り、ダート界を席巻したサウスヴィグラス、ゴールドアリュールも既に姿を消しています。そんな深い喪失感の中で、トレーニングセール上がりのモーリス、日本競馬の発展を象徴する超良血馬ドゥラメンテと対照的な出自を持つ2頭が後継争いに名乗りを上げた昨年来の新種牡馬戦線は、前評判通り両馬が激しい鍔迫り合いを続けてきました。その激闘は年を越えても行方が定まらず、新春一番の出世レースとして余りにも有名なG3シンザン記念へと戦いの場を持ち越しました。2年越しの宿縁の争いです。

 

ご存じのように、近年に至って三冠馬オルフェーヴルに始まってジェンティルドンナやアーモンドアイなど歴史的名馬を輩出して、グングンその存在感を増す一方です。その天下御免の名物レースを今年は新種牡馬モーリスがワントゥーフィニッシュで決めました。ゲート難を立て直して鮮やかに逃げ切ったピクシーナイトの学習力の高さにも感心させられましたが、大本命ククナと同じような位置どりからカミソリの切れ味を凌駕するナタの力強さで伸びたルークズネストには、まだ一枚も二枚も奥がありそうな伸び代を予感させました。この両馬はいずれも中京デビュー、経験がそのまま身となり芯となるモーリスらしい良さを譲り受けているのでしょうね。

 

モーリスは即戦力として購買されるトレーニングセール出身だけに、さすがにデビュー戦を楽勝していますが、完成度の高いクラシック候補に混じると限界を見せ、夏を迎えると環境を変える意味での転厩をきっかけに、早々と長期休養に入り、心身の充実に専念します。このプロセスは父のスクリーンヒーローもほぼ同様で、彼は夏の北海道で力を付けると、秋には開業1年目だった鹿戸雄一調教師にジャパンCの大金星をプレゼントしています。息子モーリスも休養から帰った4歳1月から1000万下条件から何と安田記念、マイルチャンピオンシップ、香港マイル、香港チャンピオンズマイルまでG1・4連発を含めて7連勝の快進撃を発進させます。しかもそれで終わることなく、距離を延ばして天皇賞秋、香港カップまでカテゴリーの壁を超えて絶対王者に君臨したのですから、恐るべき成長力と驚嘆するしかありません。

 

ピクシーナイトは、モーリス産駒に特徴的なサンデーサイレンスのクロスを持たないのですが、産駒合計でJRA重賞11勝と驚異的な実績を積み上げたエリモピクシーを出したダンシングブレーヴを母父キングヘイローから受け継いでいます。音無秀孝先生がピクシーナイトのポテンシャルをマイル路線に求めるのも納得の思いです。左回り東京のG1NHKマイルCが春季のゴールと言うのも、ピクシー由来を考えれば好ましいばかりでしょう。クラシックの足音がもうすぐそこから聴こえてくるようです。