今年もパリ・ロンシャンは週中から雨模様で、昨年に続いて道

悪馬場の中で行われました。こうした特殊な環境下における凱

旋門賞で活躍が目立ったのは、昨年1着・3着、今年は1着か

ら3着まで上位を独占したフランス調教馬で、そのうちの2頭

はドイツ牝系にルーツを持つドイツ血統馬でした。

 

昨年、エネイブルを差し切る大金星を挙げたヴァルトガイスト

は、ドイツ牝系を代々受け継ぐ母をアイルランドに運んで大種

牡馬ガリレオを配合。受胎が確認され、エネイブルの父ナサニ

エルが繋養されていることで有名なイギリスのニューセルズパ

ークで誕生しました。やがて凱旋門賞仕掛人アンドレ・ファー

ブル厩舎の門を叩き、競走馬生活をスタートさせています。種

付けから生誕、育成、調教、実戦まで、すべてを異なる国で経

験している、こうした「多国籍ホース」が当たり前の存在にな

っています。

 

今年クビ差2着だったインスウープはドイツ牝系馬にガリレオ

というヴァルトガイストと瓜二つの血統構成を持つ母に、道悪

開催の独ダービーを勝ったアドラーフルークを配合し、アイル

ランドで誕生しています。フランスのフランシス・グラファー

ル厩舎で管理されたのも、凱旋門賞激走パターンの踏襲と言え

るでしょう。

 

これらは我がディープインパクトにも見られた現象なのですが、

例えばガリレオの血を求めてアイルランドへと飛び、無事に受

胎すればオーナーが気脈を通じる牧場で仔を産んで丁寧に育成

され、その後は仮に凱旋門賞を目標とするなら地元フランスの

一流厩舎に管理を委託。あらゆるプロセスにおいて「ベスト・

トゥ・ベスト」を目指し、生産・育成・調教・実戦と競走馬と

しての全生涯を貫く「多国籍ホース」が誕生します。

 

目標が違えば、委託牧場や育成場、厩舎も変わって来ますが、

アメリカはケンタッキーダービー、イギリスが女王陛下来臨の

ロイヤルアスコット、ドバイのモハメド殿下が指揮を統括する

ワールドカップ、これが世界競馬のすべてではなくとも、理想

のサラブレッドを創造する仕組みの選択肢のひとつと言えるで

しょう。世界の頂上を争うトップレースの主役は、「多国籍ホー

ス」が桧舞台の主役を張るのは、否定できない近未来だと思い

ます。日本の至宝ディープインパクトのラストクロップ、その

大半はクールモアをはじめ「多国籍ホース」が占めているよう

です。こうした時代の流れは、いずれ世界の主流に上り詰める

はず!

 

ヨーロッパはイギリス、アイルランド、フランスの主要三国を

中心にドイツ、イタリアなど先進諸国は切磋琢磨の歴史があり

、EUという政治的経済的な交流と連携のシステムも存在しま

す。有力馬主にも国境を越えてビジネス展開する方々がほとん

どで、「多国籍」にいささかの違和感も抱かず、むしろ「多国籍」

であることこそが「成功の方程式」と考えられているようです。

 

そのあたり「島国・日本」ではかなり事情が異なっていて、例

えばイギリスからアイルランドへ日帰りで種付けに出かけるよ

うな気軽さは無理ですし、調教面では調教師によって信念に従

った独自の施設群を構えている向こうに比べて、トレセンに一

本化された日本では、創造的な個性は発揮しづらいのが現状で

す。今後への大きなハードルなのかもしれません。