競馬は、人間の想像力を超えていくミステリーに似ています。

同じ日に、同じ競馬場で、同じ距離のレースが行われるとして

プロセスや結果は、まるで異なったものになるのが普通です。

無数に積み重ねても同じレースは二つとないのが不思議です。

 

先週末に凱旋門賞の舞台であるパリ・ロンシャン競馬場で3つ

のトライアルレースが本番と全くの同条件で行われました。

古馬がG2フォワ賞、3歳馬は例年ならG2ニエル賞なのですが、

コロナの影響でG1パリ大賞に差し替えられ、牝馬のヴェルメイ

ユ賞と出走資格は異なりますが、距離・コースは寸分も違いま

せん。しかし勝ち馬の走破時計は遅いものから、フォワ賞2分

33秒27、ヴェルメイユ賞が2分26秒42、パリ大賞は2分24秒

76でした。同じ施行条件とは思えない異次元級の溝が横たわっ

ています。

 

フォワ賞はアンソニーヴァンダイクがスローペースに持ち込み

日本では考えられない2分33秒27というスーパー鈍速時計で、

超長距離王者ストラディヴァリウスの追撃を凌ぎ切りました。

英ダービー制覇の金星以来1年余ぶりの勝利でした。もともと

スローで先行して器用なコーナーワークを主武器に、二の脚を

渋太く繰り出す自分のカタチに持ち込んだのが勝因でしょう。

ただ、本番で同じような競馬ができるか?簡単ではありません。

 

鮮やかな登場感では、タルナワとモーグルが光っていました。

タルナワはアガ・カーン殿下の愛馬。凱旋門賞4勝、華やかな

大舞台にはなくてはならない顔でしょう。

モーグルは、昨年のパリ大賞を勝ったジャパンの全弟ですから

兄弟制覇を達成したことになります。鋭い瞬発力に見どころが

あった兄に比べて、良い脚を長く使える凱旋門賞向きの仕様に

鍛え上げられているようです。未勝利戦勝利から連闘で挑んだ

ダービーを逃げ切った僚馬サーペンタイアのナイスアシストも

生きたのでしょうが、本番を彗星のように駆け抜けられるか?

楽しみな1頭であるのは間違いなさそうです。