先週末はアイルランドのカラで愛ダービーが開催されました。 この22年間でクールモア軍団を率いるエイダン・オブライエン 厩舎が13勝を上げ、内6度は1-2-3決着した十八番レースです。 今年も出走15頭中、オブライエン師が6頭、長男ジョセフ師が 3頭、開業したばかりの次男のドナカ師も早々に1頭を送り込み 親子合計で10頭という他を圧する堂々のラインナップでした。 クラシックに競馬における至高の価値を認め、そこを勝利する ために、馬を育て・鍛え・仕上げる情熱が生み出す態勢です。 しかし、これだけ多頭出しになるとジョッキー手配も一苦労。 とくに現在はコロナ禍の影響で、国境を越える移動には2週間の 隔離検疫が課され移動は事実上不可能な状態になっています。 オブライエン師は主戦ライアン・ムーアをイギリスに留まらせ 脇をデットーリやジェームズ・ドイルなどの腕達者がサポート する体制を築き上げ、アイルランドにはセカンドジョッキーの シーミー・ヘファーナンを大将格に配し、厩舎馴染みの騎手を 総動員する二重のシフトを敷いて今シーズンに臨んでいます。 愛ダービーは、ステイヤーの出世レースとして名高いロイヤル アスコットのG2クイーンズヴァーズを圧勝したサンティアゴが 1番人気に。もちろん留守居部隊の総大将シーミーが鞍上です。 シーミーは、クイーンズヴァーズ騎乗のライアンと同じ作戦で サンティアゴを導き、ラスト2ハロンからスパートさせ、早々に 先頭を奪うと大外から鋭く追い込む僚馬タイガーモスの追撃を 抑え込みます。着差は頭でも余裕があり、見事な騎乗でした。 エイダン勢の1-2-3-4決着はたぶん史上初のサプライズです。 シーミーは、愛1000ギニーのピースフルに続くG1勝利を飾り、 この翌日もマジカルでプリティポリーSを圧勝、わずか2週間で G1を3勝と大仕事をやってのけました。イギリス組ライアンも 英1000ギニーとクイーンアンSを勝ちG1は2勝と役目を果たし 厩舎全体では5勝とオブライエン大旋風を吹かせています。 サンティアゴは馬群を抜け出す一瞬の瞬発力に優れ、そこから バテない末脚を息長く使える持久力に富んだステイヤーです。 この勝利でセントレジャーのオッズは3.5倍の1番人気に抜擢! 来年はロイヤルアスコット名物のゴールドCを目指すようです。 ステイヤー界には、そのゴールドCを10馬身ちぎって3連覇した 絶対王者ストラディヴァリウスがいますが、この3年間を通じて わずかにハナ差でしたが、唯一このモンスターを負かしたのは 先日無念にも故障引退した厩舎の先輩キューガーデンズだけ。 この新鋭が、先輩の意志を継ぐ名ステイヤーに育ちそうです。 それにしてもオブライエン厩舎は、ここまでG1通算は356勝! 内クラシックは、愛英仏で破天荒な86勝を積み重ねています。 馬房制限のハードルが高い日本では、考えられない記録ですが 何をもって自らの価値としているかが、明快に理解できます。 ホースマンとして生まれて何を成すべきかが伝わって来ます。 いよいよ今週末は、イギリスのダービー&オークスウィーク! 大活躍のシーミーに続いて、ライアンが晴れ舞台に躍ります。