「降級制度」廃止によって、条件戦においては3歳馬の勝率が
急騰しているというお話をしています。1勝毎にクラスが上がり
それは固有の権利として生涯保証される分かりやすい仕組みは
人間の都合ではなく、サラブレッドの本質に基づいたフェアな
「国際基準」の導入をトリガーに進められて来ました。

1780年にイギリスでダービーが創設され、クラシックを頂点に
現代競馬の体系が整備されていく中で、サラブレッドは3歳時に
競走馬としての完成を迎えるよう創造された生きものです。
しかし競走馬としての遺伝子と、修得に時間がかかるレースに
必要な経験知や、個体としての向き不向きとは別の物ですから
番組編成上は総合的に4歳が基準とされるのが一般的です。
日本の通常の定量戦では4歳以上57キロに対し、3歳馬は時期や
距離により54キロ、55キロ、56キロと変化しますが、手厚い
重量特典が認められています。(いずれも牝馬は2キロ減)
遺伝子的にも、重量で優遇されるなど番組編成上でも3歳馬が
優勢であるのは間違いがなさそうです。

こうした3歳馬優位を本質とする現代競馬のあり方を巡っては
ヨーロッパでは、G1における定量が見直され、3歳馬のそれが
増量される動きも出て来ています。例えばシーズン最初の混合
G1として有名なエクリプスSでは、4歳以上60.5キロに対して
3歳馬は55.5キロと5キロのアローワンスを貰っていたのですが
3年前から56キロへ変更されて、わずか500グラムと大ぶりの
ステーキ1枚分ですが重量差が縮められました。シーズン後半の
凱旋門賞も同様で、古馬59.5キロVS3歳56キロが59.5対56.5と
3.5キロ差から3キロ差へとアローワンスが削減されています。

背景としては、生産面で早熟血統の戦略的な導入、調教面での
技術革新が3歳馬の完成・成熟スピードを加速させていることや
強い馬ほどブランド価値を維持したまま早々と引退して種牡馬
入りの傾向が強まっていることなどが考えられます。
しかし、現代サラブレッドの全体的な進化が、その中核である
3歳馬の急速な進化を底上げしているのも事実でしょう。
さらに3歳馬にはクラシックを頂点に同世代同士による高額賞金
レースがふんだんに編成されており、サラブレッドビジネスの
観点からは3歳馬中心のフォーメーションが自然に思われます。
 
アイルランドとイギリスを主戦場に、世界の競馬場を渡り歩く
エイダン・オブライエン厩舎の今季の入厩馬を世代別に見ると
2歳130頭、3歳108頭と若駒勢が大きなシェアを占める反面で、
4歳13頭、5歳4頭、6歳以上はゼロと古馬陣は極端に減ります。
2歳戦のスタートが早いこともありますが、若駒を早い時期から
入厩させ、じっくり鍛えて3歳クラシックで勝負する戦略です。
古馬になりオーストラリアやアメリカに移籍する馬もいますが
少数精鋭を原則に、種牡馬として繁殖牝馬としての価値向上を
目的とする現役続行が行われています。
ここまで徹底的ではなくとも、世界的潮流の今と未来を支える
基本構造がここにある、と素直に思えて来ます。